私が担当する清水は先月17日の仙台戦で敗れ、クラブ史上初のJ2降格が決定しました。

 93年のJリーグ創設からJ1で走り続け、G大阪長谷川健太監督(50)ら、多くの日本代表を輩出してきた名門がついに陥落しました。クラブは現実をを真摯(しんし)に受け止め、前に進んでいかなければいけません。

 しかし、再建に向けた道のりは決して平たんではありません。8月から指揮を執った田坂和昭監督(44)は今季限りで退任が濃厚となっています。クラブは後任監督を「Jリーグ指導歴のある日本人」に絞って水面下で動いているようですが、進展がないのが現状です。さらに、退任報道が明るみに出た原靖強化部長(47)の処遇も未定と、状況は混沌(こんとん)としています。

 左伴繁雄社長(60)は「今シーズンが終わるまでにつまびらかにする」と話していますが、監督、強化部長の後任人事がずれ込めば、来季に向けて後れを取ることは否めません。降格が決まっている山形はすでに石崎信弘監督(57)の続投を発表。来季J1で戦う柏や名古屋も新監督を決めて動きだしています。清水は1年でのJ1復帰を目指すために慎重に進めていることは分かりますが「善は急げ」という言葉があるように、後任人事がはっきりすれば、来季に向けた選手編成も進められるはずです。

 降格した原因の1つは明確なクラブビジョンを示さずにチーム作りを進めてきたことです。過去の失敗を無駄にしないためにも、早期に方向性を示さなければいけない時期にきていると思います。クラブは天皇杯も2回戦で敗れたため、22日のリーグ甲府戦で今季は終了。降格が決まってすでに3週間以上が経過しており、タイムリミットは迫っています。

 サッカーどころで有名な静岡で産声を上げ、多くの名選手を輩出してきたクラブが立ち直ることができるのか-。苦境に立たされた時こそ真価が問われるといいます。今がまさにその時ではないかと感じています。【神谷亮磨】


 ◆神谷亮磨(かみや・りょうま)1985年(昭60)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼稚園からサッカーを始め、高校は東海大静岡翔洋(旧東海大一)でプレー。08年入社。11、12年はJ2磐田を取材し、今季から清水担当。