8月19日のFC東京戦。途中出場した浦和レッズのMF矢島慎也(23)が放ったミドルシュートは、惜しくも右ポストを直撃した。「ちょっと外めだとは思いましたけど、入ったかなと思いました」。すぐに次のプレーへと走ったが、試合後も自身への不満が残っていた。

 時間をかけてチャンスをつかんでいる。昨夏はリオデジャネイロ五輪で主力として戦い、今季、J2岡山への期限付き移籍を終えて浦和に戻ってきた。ただ、ミハイロ・ペトロビッチ前監督の指揮下ではなかなか出番に恵まれなかった。天皇杯2回戦のJ3盛岡戦では格下相手の試合で出場したものの、前半で交代。不完全燃焼の時間が続いていた。全体練習後に自主練習に取り組む毎日。ある真夏の練習後には、大粒の汗をぬぐいながら「(練習の)質は落ちていると感じている」と口にしたこともあった。

 堀孝史監督が指揮をとるようになってから、2列目で出番が増えた。明白に「状態のいい選手を使う」と打ち出す新指揮官のもと、地道な練習でコンディションを保った日々が報われた。だからこそ、矢島は表情を引き締める。「2列目でプレーする選手に求められるのはやっぱりゴールになると思う」。浦和に戻ってから、公式戦では得点がない。MF李忠成、MF武藤雄樹ら厚い戦力がそろう前線で、なにより本人が満足していない。

 出場機会を得た夏場を通じ、少しずつながら自信が戻ってきた。「ペナルティーエリア前からのミドルシュートをもう少し増やせれば(得点の)バリエーションも増える」。1つのゴールが、矢島を大きく変える予感がする。【岡崎悠利】

 ◆岡崎悠利(おかざき・ゆうり) 1991年(平3)4月30日、茨城県つくば市生まれ。青学大から14年に入社。16年秋までラグビーとバレーボールを取材し、現在はサッカーで主に浦和、柏、東京V、アンダー世代を担当。