「勝つしかないし、勝てばいい」。アルビレックス新潟の最年長選手、ボランチの本間勲(36)は淡々とした口調で決意を言葉にした。

 新潟はJ2降格の危機に直面している。04年の昇格から14年。昇格組では最長のJ1連続在籍年数を誇っていたが、崖っぷちに立たされた。

 28節を終えて勝ち点12の最下位。J1残留圏の15位広島との勝ち点差は15。14日のG大阪戦で引き分け以下なら、広島などの結果次第で降格が決まる。残留の可能性を確実につなぐには、G大阪戦で勝ち点3を積み上げなければならない。

 本間は現チームで03年のJ2制覇、04年のJ1初年度を体験している唯一の存在だ。歓喜の昇格、高揚感たっぷりだったJ1参戦を知っている男が、今どのような胸の内でいるか。察しはつく。ただ、土壇場の一戦を前にしても、ぶれはない。「まず自分が試合に出られるようにアピールしなければならない。出たら、自分ができることをする。そこに集中します」。

 ここまでリーグ戦出場は4試合。ケガもあり、9節柏戦を最後に出番がない。ボランチは名古屋から移籍の磯村亮太(26)と加藤大(26)が務めている。ピッチで貢献するためには、そこに食い込まなければならない。ともすれば気負って、何もかもこなそうとしても仕方ない状況だが、「やるべきことをやる」というスタンスは不変だ。

 試合に出られなくても、チームのタスクを実行しようと練習に取り組む。すべてにおいて、決して手を抜かない。当たり前のことを36歳のベテランはやり続けてきた。若手への助言や雰囲気づくりも意識してきたが、第一に、背中で見せてきた。

 00年から14年8月まで新潟に在籍。その後栃木に移籍し、今季復帰した。自身が不在の間、選手が大幅に入れ替わり、チームの雰囲気も変わった。自然と振る舞い方に気を使うこともあったが、ひたむきさは迷わず貫いた。

 勝てない状況が続いたためか、今季は練習の狙いの不徹底、戦い方のあいまいさなど、隙があったことは否めない。そこで何が必要なのか。「やるべきことをやる」。本間は姿勢で訴えてきた。勝つしかない試合に向かう覚悟。新潟を最も知っている男から周囲は感じなければならない。【斎藤慎一郎】


 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)生まれ、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。新潟はJ2時代から取材。サッカー以外にはBリーグ、Wリーグのバスケット、高校スポーツなど担当。