川崎フロンターレはルヴァン杯決勝でセレッソ大阪に0-2で敗れ、悲願の初タイトルはならなかった。今年元日の天皇杯決勝で鹿島に敗れ、チームは鬼木達新監督(43)の下「タイトルをとる」と誓いスタートしてきた。球際と対人で負けない「守備での激しさ」が備わり、今回の決勝前まで公式戦49試合(リーグ、ACL、ルヴァン杯、天皇杯)を戦い、わずか7敗。圧勝する試合以外にも、1点差を逃げ切ったり0-2から大逆転をする展開も経験し、機は熟したかに思えた。

 だが、開始早々にDFエドゥアルド(24)のミスから失点。これでセレッソ大阪は「しっかり守ってカウンター」を徹底してきた。今季は引いて守る相手のブロックを崩し、勝ち点を重ねてきたが、決勝の大舞台の雰囲気での緊張もあったのだろう。攻撃の生命線でもある「パス」「トラップ」のズレが目立った。最後はDFエドゥアルドを前線にあげ、1点をもぎ取りにいったが、逆に相手のカウンターを浴び万事休す。国内タイトルで年間2位、準優勝が計8回(リーグ3回、ルヴァン杯4回、天皇杯1回)となり「シルバーコレクター」の返上はならなかった。

 鬼木監督は「タイトルを取らせて上げたかった。自分の力不足を感じている」と責任を口にした。交代カードの切り方にも触れ「もっと(ゴール前の)パワーを出せたのでは」と悔やんだ。圧倒的にボールを保持しても1点が遠く「最後の質の部分」を課題に挙げた。

 鬼木監督は就任1年目だが、敗戦を糧にチームをたくましくしてきた。ACL準々決勝・浦和戦が好例だ。第1戦を3-1で勝利するも、第2戦は退場者も出て1-4と敗れ準決勝進出を逃した。第2戦では、第1戦の「貯金」を守ろうとしたが守りきれず、逆に相手の猛攻を浴びて逆転負けを喫した。ルヴァン杯準決勝・仙台戦ではACLの教訓を生かした。第2戦で退場者が出て10人で戦う展開になったが、チームの真骨頂である「攻撃」を前面に出し続け「しっかり守ってカウンター」に徹し、試合終了間際にダメ押し点を奪い決勝進出を決めた。

 リーグ戦は現在、首位鹿島に勝ち点4差の2位とタイトルを狙える位置につけている。残り試合は3。まだ、逆転優勝の可能性は残されている。ルヴァン杯決勝の結果は、天が与えた試練。メンタルの立て直しを含めこの敗戦をどう糧にするのか。18日のガンバ大阪戦までには、十分な準備期間がある。さらにたくましさを増していれば、悲願のタイトルへ近づくに違いない。【岩田千代巳】

 ◆岩田千代巳(いわた・ちよみ)1972年(昭47)、名古屋市生まれ。菊里高、お茶の水女大を経て95年、入社。主に文化社会部で芸能、音楽を担当。11年11月、静岡支局に異動し初のスポーツの現場に。13年1月から(当時)J1磐田を担当。15年5月、スポーツ部に異動し主に川崎F担当。