セレッソ大阪の桜が、また咲いた。

 女子サッカーのなでしこリーグの入れ替え戦で、C大阪堺レディース(2部2位)がちふれASエルフェン埼玉(1部9位)を下し、1部に初昇格を果たした。15~20歳という若いチームが、来季1部で奮闘する。

 「兄」がもたらした波に乗った。C大阪は今季、ルヴァン杯を制してクラブ初のタイトルを獲得。なでしこの試合に足を運んでくれたり、練習に参加してくれたFW柿谷曜一朗らの雄姿に刺激を受けた。MF松原志が「移動中、空港のテレビのチャンネルを変えて、みんなで決勝を見た。勢いをもらった」と言えば、MF林も「セレッソ全体に良い流れを持ってきてもらった」とうなずく。

 「究極の育成クラブ」を目指し、選手全員が生え抜きだ。10年に「C大阪レディースU-15(15歳以下)」として創設し、12年に「C大阪レディース」と改称して年齢制限をなくした。さらに「C大阪堺レディース」に改称した13年にチャレンジリーグ(3部相当)に参入した。当初はグラウンドを転々としていたが、徐々に環境が整った。「C大阪レディースU-15」1期生MF松原志歩(20)は「最初は環境も良くなかったし、先のことなんて全然分からなかった。1部なんて想像もできなかった」と振り返る。

 13年に就任した竹花友也監督(43)の存在も大きい。10代の選手が多く、「父親目線ですよ。『学校どうや』『最近どうや』ってサッカー以外のこともよく聞きます。たくさん会話するようにしています」と柔らかな表情で話す。プレーでは「セレッソファミリー」のモットーである「前線からの守備」を徹底。格上の相手にも走り勝てるように鍛え上げ「女子に足りないのは、90分間走ることと言われる。その点は1部にも通用する」と胸を張る。

 16年に2部に昇格してからは早かった。1季目でいきなりリーグ戦3位。ゲーム主将のMF林穂之香(19)は「1位2位との差は埋められる。いけると思った」とチームの成長を感じ、竹花監督も「16年くらいから、選手は常に『1部でやりたい』と言っていた」。そして、2部2季目の今年はリーグ最少の1敗で、勝ち点41の2位。初めて出場した入れ替え戦で、2戦全勝で1部昇格を決めた。

 選手は全員学生で、中学3年生もいる。竹花監督は「なでしこリーグに参戦しているからには、結果が全てだし、観客を楽しませないといけない。同じような年頃の子に比べて大変やと思います」と思いやる。勉学とサッカーの両立は大変だろう。それでも「学生だから」「フィジカルが違うから」という言い訳を一切しない態度に頭が下がる。数分前まで声を弾ませて笑顔を見せていた普通の女の子が、ピッチに入った瞬間に顔つきが変わるのを見て、ふと思った。「来年は兄妹優勝かな」。その期待は高まっている。


◆中島万季(なかしま・まき)1988(昭63)年8月11日、鹿児島県薩摩川内市生まれ。高校野球やアメリカンフットボール、高校ラグビーなどを経験し、4月からサッカー担当。