日本サッカー協会(JFA)は、来年1月27日に会長選(役員改選)を実施する。

 昨年1月、同協会初の選挙による会長選挙が実施された。それまでは役員選考委員会で会長候補を推薦し、全国サッカー協会の代表らを中心に構成された評議員会で承認する形だった。「密室」と言われる恐れがあり、国際サッカー連盟(FIFA)から指摘されての制度変更だった。

 新制度になって2年。FIFAの要請と、日本国内法とのずれなどがあり、制度の見直しが検討された。「選挙制度を廃止すべき」と主張する声も根強い。そこで、田嶋幸三会長は、岡田武史副会長を指名し、検討を命じた。大仁邦弥名誉会長や弁護士らが加わり、会議を重ねた。その会議からの中間報告は、選挙に対する否定的な内容だった。

 JFAは、報告書を作成し、FIFAへ報告し、日本独自のローカルルールによる会長選出を申し出た。FIFAは即答で「ノー」とした。もし、JFAがその返答に不服とした場合、W杯出場権の剥奪などの不利益が予想される。JFAは複数にわたってFIFAにアピールしたが、結局、受け入れてもらえず、来年1月に再び選挙が実施されることになった。

 その選挙に向けた臨時評議員会(11月25日、JFAハウス)で、岡田副会長が、その経緯などを評議員に説明した。資料が配布され、そこには、選挙への否定意見として「当該者でない者も含めた選挙活動により、関係者や職員の間に分裂が起こったり、選挙活動中の業務が滞ったりするなどの弊害もあったように思う」の一文が入り、「ワイズマンによる間接選挙を私は推奨する」と締めている。

 「関係者、職員の分裂」。これは選挙の過程だけでなく、新体制がスタートしてからも継続した。まず対抗馬だった当時の原博実専務理事は平理事になり、結局、辞職した。原系と思われた職員も辞職したり、要職から外れている。新体制の考えに沿った選手の育成や代表強化を進めるためのやむを得ない選択と言えば、それまで。しかし見方を変えれば「粛清」とも取れる。

 会長選に出馬する人は、当然、だれもが日本のサッカーを進化させることを第1目標に掲げる。方向性が同じでも、やり方や進め方が違えば、派閥ができる。権力を持つ人間に、反対勢力を抑えたい気持ちが生まれるのは自然な流れかもしれない。岡田副会長の私案は、それをも考慮してのものだろう。これは、サッカー界だけの話ではないような気がする。【盧載鎭】

 ◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、韓国ソウル市生まれ。88年来日し、96年入社。20年間、サッカーを担当し、大相撲を約2年間(13場所)担当した。大相撲ファンとして、最近の騒動には胸が痛い。2児のパパ。