刺さる言葉だった。

 「このクラブにはずっと大切にしてきたものがある。それを思い返さなければならない」

 こう話したのはアルビレックス新潟の主将、MF磯村亮太(27)だ。

 4月28日のJ2第11節、新潟はレノファ山口を2-1で破り、連敗を4で止めた。先制点を挙げたのは磯村。こぼれ球を拾っての1本だった。新潟は最後まであきらめない戦いぶりを見せた。決勝点は試合終了間際のDF安田理大(30)のPK。クリアをしつこく拾って攻撃を続けた結果、クロスに飛び込んだFW矢野貴章(34)が倒されてゲットした。

 この試合、新潟のファウルは21。うち15が敵陣でのもの。リスクを恐れず、前線からプレスをかけた証しでもあった。そこで奪ってショートカウンター。伝統のスタイルを貫いた。4連敗中に見られた、あっさりとボールを奪われるシーンや、安易な横パスからミスをするひ弱さを打ち消した。

 磯村が「思い返さなければ」と言っていたのはこの試合の前。思い返すべきものはこの戦い方と、その土台にあるメンタルだったのだろう。

 新潟らしさ。これが今季のキーワードだ。ハードワークを惜しまず、球際で激しく闘い、最後まで走る。J1からの降格チームは、当然全チームのターゲットになる。受け身になりがちな空気の中、ガムシャラさや泥臭さが薄れかけていたことは否めない。磯村はそれを察し、「このクラブの大切なもの」と受け止め、チームメートにも自覚するよう求めた。

 昨季途中、名古屋から移籍。J2降格が決まった甲府戦では、ピッチに座り込み、涙を浮かべながら悔しがった。主将になった今季、J1復帰にかける思いが人一倍強いことは想像できる。移籍からまだ1年もたっていない。14年間J1で戦ってきた新潟の姿を、大半は外から見てきた。それでも新潟の土台を、受け継がれてきたものを、言葉で表現できて、プレーでも示せるほど理解している。

 第12節金沢戦、新潟は今季初の連勝を決めた。新潟のあるべき姿を追求する主将のもと、J1復帰への道をたどっている。【斎藤慎一郎】


 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)生まれ、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。サッカー以外にはバスケットのBリーグ、Wリーグの高校スポーツなどを担当する。