どことなく、うれしそうだった。27日の国際親善試合ユーロ・ジャパン杯・横浜F・マリノス-マンチェスターC(日産ス)を視察した日本代表の森保一監督(50)は「すごい試合でしたね」と目尻を下げた。技術の高さを見せるプレミア王者相手に、攻めの姿勢を貫いた横浜。1-3とスコアは差がついたが、相手がベストメンバーでないことを差し引いても、見どころは多かった。チェルシーに勝利した川崎フロンターレの試合も視察していた指揮官は「Jリーグができてから、日本サッカーのレベルは確実に上がってきていると思います。クラブ単位でも、代表の活動を通しても感じています」と、うなずいた。

森保監督が着眼していたのは「選手の目線」だった。どんなスポーツでも、一方が“名前負け”をすることはある。相手を分析して力関係を把握した結果、普段と違う戦い方から勝機を見いだそうとしても、まったくおかしくない。だが横浜も川崎Fも、欧州の強豪相手に、普段のスタイルを貫く道を選んだ。日本代表を率いる指揮官は、その姿勢に頼もしさを感じていた。「世界の舞台でも強豪と同じ目線で戦えるメンタリティーに上がってきている。日本代表の監督としても感じていますし、川崎Fと横浜の試合を見ても世界と同じ目線になってきていると思います」。視察時に見ているのは、代表入りが有望な選手のコンディションだけではない。未来の日本サッカー界を引き揚げていくための課題と成長度合いにも目を配り続けている。

9月10日のアジア2次予選ミャンマー戦(アウェー)を皮切りに、22年W杯カタール大会に向けた戦いの幕が開く。ミャンマーだけでなく、同じ組に入ったキルギス、タジキスタン、モンゴルから見れば、日本は相当な格上国だ。対戦国に“名前負け”させて同じ目線で戦わせることなく、堂々の横綱相撲で難なく突破することを期待している。

【浜本卓也】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆浜本卓也(はまもと・たくや)1977年(昭52)、大阪府生まれ。03年入社。競馬、競輪担当から記者生活をスタート。格闘技、ボクシング、プロ野球と巡り、18年12月にサッカー担当に復帰した。