日本中が熱狂したラグビーW杯。まだ大会は続くが、個人的に日本の戦いが終わり熱は冷めつつある。スコットランド戦ノーサイドまでの残り25分の粘りは感動そのもので、長い期間、私の記憶に残るのは間違いない。20年以上サッカーに携わったものとして危機感もあった。1年前のロシアW杯ポーランド戦最後の10分を思い出したからだ。

ラグビーの結果で一喜一憂する時、小さいかもしれないが、うれしい発見があった。本紙でコラムを掲載していただいている村井満チェアマンの「無手勝流」。村井さんは、ラグビー日本代表の活躍を、本気で喜んでいた。他の競技を応援する論調に、一部コアなサポーターからJ事務局へ苦情の連絡があったようだが、私は村井チェアマンの器の大きさを感じた。

スポーツ団体のトップとして当然の姿勢と思っているが、文字数に限りのあるコラムに、他競技をあれだけ褒め倒すのは珍しいし、勇気が必要だ。どうしても、目をサッカーに向けてほしいとの願望があるはずだ。ファンを分け合うことも考えられるし、将来ラグビーがプロ化すると、試合会場の確保で衝突する可能性もある。

少し視点を変えてみる。サッカー日本代表は、初めて迷彩柄デザインの代表ユニホームを採用するという。女子の「なでしこジャパン」ほど定着していないが、日本サッカー協会は、男子日本代表を「サムライ・ブルー」と命名している。迷彩柄とサムライはマッチしない。それでもデザイン変更に踏み切ったのは、代表ユニホームが期待ほど売れない現実があるからだろう。

桜のジャージーが売り切れたのとは対照的。かつて「KAZU」や「NAKATA」の青いユニホームがどれだけ売れたか。個人的にはマジョルカMF久保が代表レギュラーに定着したら、少しは売り上げも伸びると、甘い期待をしている。協賛企業と日本サッカー協会は共存が必要だし、スポンサー料で確保された財源は、若手育成にも充てられる。

ネット上で、迷彩柄に対する不満の声がある。「伝統と重みを感じない」の意見が多い。一理ある。確かにブラジルやアルゼンチン、イタリア、オランダなど、強豪と言われる国はユニホームのデザインをほとんど変えない。ユニホームは象徴であり、連帯意識を高めてくれるアイテムでもある。迷彩柄採用は、苦肉の策かもしれない。

しかし、スタンドが迷彩柄で染まり、渋谷のスクランブル交差点が迷彩柄ユニホームを着た若者であふれることを切に願っている。桜のジャージーもどんどん売れて、スポンサー料の大幅アップ、注目度アップとともに、プロ化にぜひ成功してほしい。サッカー日本代表が強くなるためには、チーム内競争が必要で、日本サッカーが強くなるためにも、他の競技との競争、競技人口確保の努力は、必要不可欠だと思っているからだ。【盧載鎭】

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年来日、96年入社。迷彩柄は個人的に好きで、今持ち歩いているカバンは迷彩柄で、同柄の下着も12枚持っている。2人の娘はBTSファンで、ARMY(アーミー)でもある。

スコットランド戦の試合後、田中(中央)と喜びを分かち合うリーチ(右)。左は山中(10月13日撮影・狩俣裕三)
スコットランド戦の試合後、田中(中央)と喜びを分かち合うリーチ(右)。左は山中(10月13日撮影・狩俣裕三)