サッカーのプレーで例えると、予期しない状況での突然のパスに、冷静に足技でさばいた感じか。

10日のTBS系テレビ「サンデーモーニング」のスポーツコーナーに、ガンバ大阪の元日本代表MF遠藤保仁(40)がリモート生出演した。司会は関口宏さん。ややむちゃぶりに感じた質問にも、遠藤らしさ全開だった。

新型コロナウイルス問題で中断しているJリーグの話題などが、そこそこに終わると、現在40歳という年齢を問われた。

「サッカー界では大ベテランの方です」

現在、J1通算出場記録は楢崎正剛と並ぶ最多631試合。今度はJリーグ再開後に単独記録樹立の話題かと思いきや、いきなり来季も現役でやるかという質問。予想外のサイドチェンジだったが、これも動じず得意のパスで返した。

「気持ち的にはやりたい」「頑張ります」

画面の向こうでは終始リラックスし、穏やかな表情の遠藤がいた。日曜日の朝にふさわしい、さわやかな受け答えだった。

この番組はスポーツに特化しているわけでもなく、76歳の関口さんも、さほどサッカーに詳しいわけでもないだろう。いわば視聴者の平均的な目線での質問だったといえる。

しかも生放送で出演が数分間に限られ、会話に「起承転結」の流れが保証されるとも限らない。その中で、関口さんに丁寧なパスを返し続けた。まさに“あっぱれ”だった。

日本代表として国際Aマッチの最多出場記録(152試合15得点)を持つように、究極の勝負を重ねてきた遠藤には、情報番組の生出演でさえ、少しの重圧も感じていないだろう。

ただ、遠藤の父武義さん(72)と母ヤス子さん(70)から以前、聞いていた言葉を思い出した。

「相手が一般の人でもマスコミの人でも、将来、いつお世話になるかもしれない。そういう出会いや縁は大切にしなさい」。そう言って遠藤は育てられてきた。だから記者自身も変な質問をしようと、優しいパスしか返されたことがない。

来年1月には41歳になる学年で、多くの同期や後輩でさえ既に現役を引退している。この日、関口さんに来季の現役続行を宣言したように、まだまだ正確無比なパスや、攻撃の組み立ての技術は日本トップクラス。今夏に単独記録達成が確実な通算632試合出場は、単なる通過点である。(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆横田和幸(よこた・かずゆき)1968年(昭43)2月24日、大阪府生まれ。91年日刊スポーツ入社。96年アトランタ五輪、98年サッカーW杯フランス大会など取材。広島、G大阪などJリーグを中心にスポーツ全般を担当。