J2東京ヴェルディのMF小池純輝(34)が絶好調だ。5月9日現在で13試合8得点で得点ランク2位にランクイン。19年の年間16得点のキャリアハイ更新も見えてきた。19年に東京Vに復帰し、2年あまりで31得点を挙げ「成長に年齢は関係ないと思える時間が過ごせている。僕個人としては、永井監督のサッカーでプレーさせてもらっていて今のサッカーにゴールを取らせてもらっている感覚がある。今のサッカーの価値を証明できるようにプレーしたい」と笑みをこぼした。

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サッカーで結果を出し続けている小池だが、ピッチ外でもう1つの顔を持つ。14年からMF梶川諒太(32=東京V)と児童養護施設への訪問を続け、15年には「フットボールで繋げる、フットボールが繋げる」をコンセプトに児童養護施設の子供の支援を行う団体「F-connect」を立ち上げた。大分MF野村直樹、MF町田也真人ら同志も増え、個人や法人の支援者も増えた。現在も施設を訪問し、子供たちを公式戦に招待するなど交流を深めている。

支援活動8年目となる今年は、活動がさらにパワーアップした。子供たちに「ものをつくる喜び」を体験してもらおうと、長野県飯綱町で「エフコネファーム」と名付けられた畑をつくり、子供たちと農業を経験するプロジェクトを始めたのだ。

小池はこう経緯を語る。「僕も家のベランダにあるプランターでサツマイモをつくったり、以前から農業に興味があった。愛媛FCに在籍していたころ、知人を介して、畑の2畝(うね)をお借りして、ホウレンソウや大根、ブロッコリーをつくったんです。自分が栽培の過程に関わって収穫したものに、すごく価値を感じた。そこで、何かやりたいなと思って」。

小池の漠然とした「思い」は、サッカーのつながりを通して実現へ向かった。数年前、沖縄の自主トレーニング中に、コーディネーターの紹介で、当時地域リーグのAC長野パルセイロでプレー経験を持つ三橋亮太氏と知り合った。小池と同い年の三橋氏は、長野で農業事業を展開しており、三橋氏の協力を得て「エフコネファーム」がスタート。現在は400平方メートルの畑でトウモロコシを栽培している。夏には子供たちとトウモロコシを収穫し、一緒に食べてその後はサッカーを楽しむ“小旅行”を計画中だ。

経験を楽しむこと以外に、小池にはある思いがある。児童養護施設は18歳で退所し、子供たちは自立していく。この年齢で1人で社会で生きていくことは決して容易ではない。小池は「この経験を通じ、農業に興味を持つ子供たちが出てきてくれたらうれしい。エフコネファームも、今は三橋さんたちにほぼ管理してもらっていますが、2、3年かけて自分たちで運営できるようにしたいと考えている。雇用をしていくことにもなると思うので。この体験に関わった子供たちが、今後の人生において、選択肢の1つにエフコネファームがなったら理想だな」と将来の姿を描く。

「エフコネファーム」の活動を広めるため、現在はクラウドファンディングで支援を募集している。目標額は300万円(5月31日まで)。現在は約3分の1の支援が集まっている。資金は、畑の管理費や子供たちの長野への旅費に使用する予定だ。小池は「クラウドファンディングを通して、金銭的な支援以外に、いろんな方が拡散してくれてF-connectを知ってもらえる機会になる。そこにも期待しています」と明かす。冬には野沢菜を栽培し、漬物づくりも視野に入れる。

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サッカー選手は本職がサッカー。成績が悪ければ「他の活動をしているからだ」とたたかれるリスクもあるが、小池は強固な意志でF-connectの活動を続ける。訪問はもちろんのこと、今まで会った人との縁を大事にし、自身の描く目標を着実に実行に移す。この行動力に加え、実現させるのは小池の人間力や熱い思いがあるからこそだろう。サッカーと社会活動の両方で、地に足をつけて歩みを進めている。

サッカーでは、2006年にプロ生活をスタートさせ、今年で16年目。J通算400試合出場も達成した。小池は「僕はJ1でバリバリでも、代表でもないですけど、ここまでプロで続けて、継続する力はあるのかなとは思うので。トップ・オブ・トップになれればよかったですけど(笑い)、若い選手の目指すべき姿になれるかなと」と話す。

プロ入りしたころは「35歳が節目」と思い描いていたが、今は違う。「今までもサッカーを考えてプレーしているつもりでしたけど、さらに考えて相手を見るとか駆け引きに目がいくようになった。考えているつもりだったけど、まだまだだなと。もちろん、今までの経験、過程があったからこそですが、過程プラス、その感覚が出てきたので点が取れているのかな」。サッカーもF-connectの活動もまだまだ、全力で疾走する。【岩田千代巳】

◆エフコネファームのクラウドファンディング 問い合わせ先はhttps://f-connect.org/news/2053/