川崎フロンターレのDF車屋紳太郎(29)が、センターバック(CB)で勝負の年に挑んでいる。昨季までは左サイドバック(SB)での出場が多く、日本代表でも同ポジションで4試合に出場した。今季はここまで6試合に先発したが、うち5試合がCBだった。聞くと、鬼木達監督(47)に自らCBでの勝負を志願したという。

4月、車屋は「今年はCBがメインになると思う」と話し、その理由をこう明かした。「大学時代4年間CBでプレーしたことを認められて、プロに入れたと思う。去年(11月25日、優勝が決まった)G大阪戦が終わった頃に監督と話して、来年はCBでプレーしたいと伝えて、監督も承諾してくれました。今までは左SBとして出ていたけど、CBでプレーしたい気持ちは常々もっていました」。

プロ入り後にポジションが変わる選手は多い。川崎Fでも、CBの谷口は大学時代までボランチだったし、右SBの山根は前線のアタッカーだった。反対に、本職がアタッカーの旗手は左SBやインサイドハーフも務めている。いろんなポジションができることで、存在価値が高まるという見方もできる。コンバートは、決してネガティブなことではない。

それでも車屋は、自分が長く生きてきた道で勝負することを選んだ。29歳で、プロ選手としては決して若くない。初優勝した17年は全試合に先発出場したが、その後は徐々に出場機会を減らしている。サッカー選手としての生き方を見つめなおした車屋と、勝利のための采配を大前提としながら本人の意志を尊重した鬼木監督。両者の信頼関係なくして、今の起用はなかったかもしれない。

先発フル出場で完封勝利した8日のG大阪戦後、車屋は「今年はCBでやると決めているので、無失点が一番アピールになると思った。ジェジエウや彰悟さん(谷口)ら、素晴らしい選手と競争する上で、結果を残さないといけないと思っていた」と話した。ここまで16試合のうち、CBでは谷口が13試合、ジェジエウが12試合に先発しており、車屋は序列を上げないといけない位置にいる。勝負すると決めたポジションで輝ける喜びが、言葉からあふれていた。

昨季は谷口にジェジエウ、左SBの登里と、車屋がポジションを争う選手全員がベストイレブンを受賞した。一方で、車屋も17年、18年と連覇した2シーズンのベストイレブンに選ばれている。このハイレベルな定位置争いが、首位を走る川崎Fの強さを支えている。【杉山理紗】