ベガルタ仙台の“熱男”マルちゃんが絶好調だ。Jリーグ屈指の快足アタッカーとして知られるMFマルティノス(30)はチームに今季加入し、ここまで公式戦17試合4得点で、リーグ戦に限ると14試合(先発7試合)3得点。5月に全4ゴールを決め、17位の降格圏から巻き返しを狙う仙台の原動力になっている。

勝利への熱すぎる思いが空回りすることもある。審判に執拗(しつよう)に抗議し、チームメートが「マル、マル」と制止しても納得せず、「異議」とみなされ警告を受けた試合も。また軽い接触プレーでピッチに倒れ込み、演技とも受け取られかねないような激しい痛がり方で、しばらく起き上がらず、チームの流れを遮断することもあった。得意の左足シュート、ドリブルなどアタッカーとしての質は高いが、守備に対する意識の低さが目立ち、宝の持ち腐れ状態が続いた。

ターニングポイントになったのは5月12日の川崎フロンターレ戦だ。1-2の後半42分に投入され、同ロスタイム5分、目が覚めるような左足ミドルで起死回生の同点弾。移籍後初ゴールを決めてみせた。

試合後、マルティノスについて質問を受けた手倉森誠監督(53)は「今日の途中出場は予定より短くなったが、そこで何かを果たさなければスタメンに返り咲くことはないと注文しました。仙台でようやく仕事をしてくれた」。マルティノスは3日前の同9日浦和レッズ戦で、指揮官から仕掛けが「物足りない」とハッパを掛けられ、それ以降の公式戦は6戦4発。自らの価値を結果で証明した。

同19日のルヴァン杯サンフレッチェ広島戦でダメ押し点、同26日の名古屋グランパス戦で決勝点、同30日のセレッソ大阪戦で値千金の同点弾と、マルティノスが決めた4試合は2勝2分けで無敗だ。C大阪戦後には「川崎戦前に監督と話をした際に『もっとやらないといけない』と言われ、監督もそういう話をメディアにもしていたと思う。これ(ゴール)が自分の監督への答え。試合に出られれば結果を出せると監督の要望に応えました」と語った。

カリブ海に浮かぶオランダ領のキュラソーで生まれ、すぐに本国へ移住した。オランダではサッカーを始める年齢は5歳ごろが一般的。「友達から一緒にやろうと誘われ、僕は寒いのが嫌いでずっと断っていたが、いざやってみたら面白かった」。10歳でサッカーに打ち込むようになり、競技開始からわずか10年足らずでプロまで駆け上がった。16年に来日。横浜F・マリノス、浦和を経て今季から仙台でプレーする。

気性が荒い選手だと思われがちだが、今季の目標は「100ゴール100アシスト」とジョークを飛ばすなど、おちゃめな一面ものぞかせる。さらに5月19日に27歳の誕生日を迎えたMF中原彰吾が同日の試合後、チームメートから大量の水を頭にかけられる手荒い祝福を受けた際には、すぐさま自分のタオルを手渡す“優男”ぶりも発揮した。

少年時代からの寒さ嫌いは変わらず、気温上昇とともに調子を上げてきた。SNS上では直近の絶好調ぶりに「マルティノスイヤー」という言葉も飛び交う。夏到来とともにさらなるマルちゃん無双が見られそうだ。【山田愛斗】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)