今季からなでしこ2部リーグで戦うFCふじざくら山梨が、女性の生理・PMS(月経前症候群)について新たな取り組みを始めようとしている。

オンラインピル診療サービスを展開するmederiのスポーツアンバサダーチームに就任し、選手の健康課題の年間サポートを受けることになった。ふじざくら山梨のほか、東京ヴェルディ女子ホッケーチーム、法大水泳部、中京大水泳部など6チームの女性アスリートがmederiのサポートを受ける。

ふじざくら山梨は18年11月に発足したばかり。男性指導者が多い中、選手が生理痛の悩みを口に出せない現実が起こっていた。五十嵐雅彦GMは女性トレーナーを起用し、体重や月経周期を管理するデジタルツールを導入するなど改善を図ってきた。

だが、1年半も生理が来ていないとトレーナーに報告した事例もあり「自分自身のことを把握していない選手いる。トレーナーがいても限界がある」と実感した。生理が長い時間止まると、骨粗しょう症のリスク、疲労骨折のリスクが高くなる。選手の健康にとっても重要な問題だ。

これまでは、クラブも選手も、ピルについての知識はほとんどなかった。五十嵐GMは「服用経験がある選手はいなかったですし、そもそも、自分たちが飲むものではないという意識が圧倒的で、いいものではないイメージだった」。

だが、ピルについて調べると、生理痛軽減などパフォーマンスを向上させる可能性もあると感じたという。女性トレーナーにも意見を聞いた。今回のアンバサダーを機に、所属選手の3分の1が「飲んでみたい」と手を挙げ、服用を始める予定だ。これから1年、選手への個別オンラインピル処方、産婦人科医による健康相談サポート、年4回実施の健康セミナーを受ける。

五十嵐GMは「今もまだ半信半疑で、アスリートのパフォーマンスが上がるかどうかも、分からない。でも、7、8年後にWeリーグを目指す中でいろんなことをやっていかないといけないなと。服用する選手の生理痛の度合いやパフォーマンスで、今後、服用する選手が増えるかもしれない。セミナーもあり、学びの場となれば」と、新たな1歩に期待を寄せる。

mederiのイベントには、女子ホッケー日本代表の瀬川真帆(26)が参加した。瀬川は18歳の頃から生理痛が激しくなり、ピルを飲んでいた先輩が身近にいたことで服用を始めた。最初は副反応で4キロ体重が増加したが、ピルを変え自分に合うものを見つけたことで、生理の悩みから解放されたという。

瀬川は「生理痛は本当に痛くて、走れないんですよ。でも、監督が男性で、走れない選手は試合に出られない、という環境で育っていて。ドーピングで漢方は飲めないので。生理に向き合うとなると、選択肢がピルになった。その1歩は怖いと思いますけど、踏み出したおかげで痛みがなくなった」と経験を語った。

五十嵐GMは現在、フェムテック市場(女性の体とITの分野)が伸びていることにも注目している。

「アカデミーの選手の中高生にも学びが深まって、親御さんも知識を得るきっかけになるのもいい。クラブとして社会的課題を解決して、女子サッカーの裾野を広げていければ」

女性アスリートが自身の体と向き合う機会を得るのはスポーツ界にとっても大きい。FCふじざくら山梨のイレブンが、mederiのサポートを受けどう、パフォーマンスが変化していくか。1年後にも注目したい。【岩田千代巳】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)