サッカー日本代表の次期監督の最有力候補は、強い信念を持った現実主義者-。J2札幌のイビッツァ・バルバリッチ監督(53)が、前アルジェリア代表監督バヒド・ハリルホジッチ氏(62)について語った。ボスニア・ヘルツェゴビナの同じクラブでサッカーを始め、顔を見かけたら声をかけ合ったという間柄。その動向はずっと注視していたといい、「チームの力の差を見極めて戦術を選択していける監督」と、その横顔を明かした。

 昨季途中からJ2札幌で指揮を執るバルバリッチ監督にとって、ハリルホジッチ氏は選手としても指導者としても、はっきりと記憶に残る存在だった。

 バルバリッチ監督 選手時代はハード・ラッシュが魅力の、クオリティーの高い素晴らしい選手だった。強い信念を持っている、サッカーの確固たる哲学を持っている選手だった。監督としては、自分のチームと相手チームの力の差を見極めて、戦術を選択していける人だと思う。

 バルバリッチ監督の出身地のクロアチア南部メトコヴィッチは、ボスニア・ヘルツェゴビナと国境を接している。そのため、同監督がサッカー選手としてのキャリアをスタートさせたのが、ボスニア・ヘルツェゴビナの第5の都市モスタルにあるベレジュだった。ハリルホジッチ氏が選手として、指導者としてもデビューしたクラブだ。

 バルバリッチ監督 今、私が住んでいるのがモスタル。サッカーを始めたクラブも同じで、年齢が離れているから一緒にプレーすることはなかったけれど、顔を見かけたら声を掛け合ったりはしていた。

 最近は会っていないが、動向はずっと注視していた。ユーゴスラビア代表での選手時代はもちろん、アルジェリアの代表監督として昨年のW杯ブラジル大会を戦う姿を見つめてきた。

 バルバリッチ監督 イメージとしては、そうですね、合理的。W杯を見た印象だと、常に現実的な考えを持っていて、守備でも攻撃でも、しっかりとしたチームをつくっている。

 J2愛媛で4シーズン、札幌で2シーズン目を迎え、日本人気質は分かってきた。世界でも華麗なサッカーとたたえられた旧ユーゴスラビアのサッカーにあって、日本に足りないものは「クリエーティブさや、リスクを負った選択」と指摘する。そして断言した。

 バルバリッチ監督 旧ユーゴ人は、国の状況もあって世界中に散らばっているから、他国で生活することには慣れているんだ。そういう意味では、彼もきっと、日本にうまくフィット出来ると思う。

 元日本代表監督のイビチャ・オシム氏(73)がそうだったようにボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に翻弄(ほんろう)された経験があるバルバリッチ監督。ハリルホジッチ氏に、現役時代に教えを受けた恩師オシム氏の姿をダブらせていた。【中島宙恵】

 ◆バヒド・ハリルホジッチ 1952年10月15日、旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)のヤブラニカに生まれる。フランス1部ナントなどで活躍したFWで、ユーゴスラビア代表で15試合で8点。母国のベレジュで指導者になり、パリサンジェルマンではフランス杯を制覇。リールでは仏年間最優秀監督。08年にコートジボワール代表監督に就任し、10年W杯南アフリカ大会出場権を獲得した後、本大会前に解任された。14年W杯ブラジル大会ではアルジェリア代表を16強に導いた。家族は夫人と子ども2人。182センチ。元日本代表監督のオシム氏との親交も深い。

 ◆イビッツァ・バルバリッチ 1962年2月23日、クロアチア生まれ。現役時代はDFとして旧ユーゴスラビアのベレジュでキャリアをスタート。スペイン4クラブに在籍し、97年引退。88年に旧ユーゴスラビア代表となり、イビチャ・オシム監督の下、同年のソウル五輪に出場。04年に監督に就任したボスニア・ヘルツェゴビナのNKシロキ・ブリイェグでは05-06年にリーグ制覇。ボスニア・ヘルツェゴビナ代表コーチの経験も。09年途中から12年までJ2愛媛、昨年9月からJ2札幌監督。

 ◆次期日本代表監督の人事 本格交渉を待つ段階に入っている。22日の日本協会の技術委員会では、現在フリーの指導者を中心に交渉を進めることを確認し、ハリルホジッチ氏が最有力候補となった。同氏との交渉が不調に終わった場合は、1月にギリシャのオリンピアコスを解任された元スペイン代表のミチェル氏、カタールのレクワイヤを率いる元デンマーク代表のラウドルップ氏、解任されたロシアのゼニトとの契約が6月まで残る元ローマ監督のスパレッティ氏らが続く。25日には東京都内で日本協会の大仁会長と霜田強化担当技術委員長が会談し、大仁会長は、技術委員会がまとめた候補者を了承した。