両サイドバックをこなす有吉佐織(27=日テレ)の攻撃力は、日体大時代の荒療治で磨かれた。4年の春、矢野晴之介監督(38)から「点を取らないボランチはいらない」と告げられ、関東大学女子リーグのリーグ戦で5試合ほど先発を外された。途中出場できても、得点に絡めなければ容赦なく交代を命じられた。

 1年時から主力で、3年時には初めて日本代表の合宿に呼ばれた。だが、矢野監督の目には周囲に気を配るようなプレーが物足りなく映っていた。「『自分だけでサッカーをやってはいけない』という意識がパスさばきに表れていた」と振り返る。「日本のトップで生き残るには、自分がこじ開けるという意識が必要だ」と、厳しく接した。

 矢野監督の荒療治が終わり、再び、先発起用されるようになった直後、有吉は左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂した。長期離脱を余儀なくされる重傷にもかかわらず「手術翌日からリハビリします。平気です」と気丈だったという。矢野監督は「けがしてもぶれない。これがトップアスリートだと教えてもらった」と懐かしんだ。

 12年ロンドン五輪では代表のバックアップメンバーにとどまった有吉は、攻撃力を武器に初のW杯切符を手にした。「今になって、得点を取れないと、上のレベルではどこのポジションでも起用されないと感じている」と、矢野監督への感謝の言葉を口にする。夢舞台でも攻めの姿勢を見せることが、恩返しになると分かっている。【岩田千代巳】