MF宇津木瑠美(26)の流儀こそ、プロ魂だ。中学時代は、日テレ・メニーナで一緒にプレーし、現在はクラブチーム「クアトロ」で指導者として活躍する、1歳上の姉恵美さん(27)は「自分をアピールすることが大嫌いなんですよねえ」と言う。妹にもどかしささえ感じるほどだ。

 努力する姿は見せたくない。フランスでの生活では毎朝4時半に起床し、市民が走る前に約1時間のランニングを欠かさない。川崎ウイングス所属の小学生の時も4きょうだいでの練習は、人知れず公園で。学校の授業参観では、保護者の前では手は挙げない徹底ぶり。面接のアピールタイムでは「しゃべれません」と言い切ったことさえある。

 だが見えないところでの努力は完璧主義者だった。ノートはきれいに整理して記入し、宿題も忘れたことはない。サッカーでも両親から課されたリフティング練習は、登校前に自宅で欠かさず、小2で3000回を記録した。小5では神戸で開催された男子の全国大会に出場。その際に開かれた全選手約数千人参加のリフティング大会で最後まで生き残り、大きなテレビを持ち帰ってきた。恵美さんは「集中力はすごい。引退後はパフォーマーとして生きていける」とたたえた。

 「日本に帰るのはモンペリエでリーグ優勝してから」と家族には誓っている。チームとの契約延長も決まった。前回大会はわずか2試合の途中出場。05年の初代表から10年。カナダの地で、そろそろ陰の努力を結実させる。【鎌田直秀】