【バンクーバー(カナダ)3日(日本時間4日)=鎌田直秀】米国代表FWアビー・ワンバック(35)が、親友のなでしこジャパンMF澤穂希(36)とのW杯最終決戦への思いを明かした。11年ドイツ大会決勝で敗れた「11年7月17日」が、自身のサッカー人生で唯一忘れられない日と強調。互いに「最後」と位置付けるW杯での決勝対決を制し、W杯初優勝を勝ち取る決意を新たにした。

 世界的エースのワンバックも、澤とのW杯最終対決を心待ちにした。FWモーガンらと参加した公式会見で、時折目を潤ませながら、日本と対戦する思いに力を込めた。

 ワンバック 澤は日本の象徴。尊敬する気持ちはとてつもなく大きい。澤との対戦では最高のプレーをしないと勝利はつかめない。4年前のことは常に思い出す。「11・7・17」の日付。これだけは忘れたことがない。もっと守り、もっと攻めなくてはいけないことを思い起こさせてくれ、私を高めさせてくれている。リベンジではない。ベストのチームが決勝に立つことが楽しみ。

 澤同様に、ワンバックも「最後のW杯」と決意を固めている。女子の代表歴代最多183得点、04年アテネ、12年ロンドン五輪金メダル、12年のFIFA年間最優秀選手など、数々の栄光をつかんできたが、W杯の優勝だけはない。リーグに所属することなく今大会にかけてきた。

 今大会1得点のワンバックは、全6戦に出場も、先発は3試合だけ。準々決勝、準決勝は途中出場が続いている。澤も6戦中、出場は5試合。3試合は途中出場で、決勝でも切り札として起用されることが予想され、2人の状況は似通っている。「4年前とはお互い役割も違うが、私はこのW杯で勝つことにエキサイトし、緊張もしている。寿命が縮まる思い。自分も澤も、新しい世代が上がってきたことは、とても良いことだと思っている」。

 澤とは米プロリーグのワシントン時代に同僚だった09年から交流が続く。12年には良性発作性頭位めまい症からのリハビリ中の澤を見舞った。震災からの復興を願い仙台で試合をし、被災地にも訪れて慰問した。

 だからこそ日本との頂上決戦を喜んでいる。「何といってもW杯で優勝したい。90分間、それ以上でもベストを尽くしたい」。澤との決戦がワンバックの闘志をかき立てた。