【バンクーバー(カナダ)4日(日本時間5日)=鎌田直秀】なでしこジャパンのMF澤穂希(36=INAC神戸)が、自身のW杯最終戦を前に完全燃焼を誓った。日本は今日5日(同6日午前8時)、初優勝した11年ドイツ大会、銀メダルに終わった12年ロンドン五輪に続き、米国との決勝戦に臨む。男女史上初となる6大会連続出場の澤の使命は、宿敵FWワンバック(35)との決着をつけ、連覇を成し遂げることだ。「日本女子サッカー界の象徴」が、夢と期待を背負って決戦に挑む。

 前日練習を終えた澤が、W杯ラストマッチに向け、笑顔を交えながら語った。期待や寂しさが入り交じりつつ、米国戦への決意表明が始まった。

 澤 心も体も、いい状態に整いました。自分の位置付けとしては最後のW杯としているので、本当に悔いなく全力で。そして出場機会はあるのであれば、一瞬一瞬を楽しみながら、頑張ります。

 米国との大舞台での決勝戦は3大会連続。86年7月の初対戦以降、24戦未勝利だったが11年W杯ドイツ大会でPK戦で初白星。互角に戦えるまでに成長した。

 澤 4年前は優勝しましたけれど、ロンドンでは敗戦した。決勝で負ける気持ちはお互いが分かっている。三度目の正直。どちらも同じ気持ちで戦い抜けると思う。

 ライバルもいる。ロンドン五輪後「もう1度真剣勝負をしたい」と、日の丸を背負う覚悟を決めたのは、FWワンバックの存在があったからだ。09年米国リーグで同僚となってから、親友としても切磋琢磨(せっさたくま)してきた。

 澤 対戦できるのは光栄なこと。同じピッチで戦いたい。米国はスピードも高さもパワーもあって、選手層も厚い。

 お互いのピッチでの立ち位置は変わった。先発フル出場ではなく、途中出場での切り札としての役割も同じだ。控え組への感謝も再確認した今大会。MF安藤、FW岩渕らケガ人などにも助言しながらチームメートに寄り添ってきた。再合流した安藤を抱擁して歓迎した。「23人全員で戦えてうれしい」と言い、澤の気持ちはさらに高まった。

 現地5日は「なでしこジャパン」の誕生日でもある。愛称を一般公募し、決定したのが04年7月5日(発表は同7日)だった。11年前、当時から10番を背負ってきた澤は、選手唯一の選考委員として命名に立ち会った。それだけに愛着も強い。重さも知る。11年ドイツ大会優勝後のなでしこフィーバー。各年代別代表に「ヤングなでしこ」「リトルなでしこ」と愛称が付いた時には、日本協会関係者に「なでしこジャパンはなでしこジャパンでしかない。軽いものじゃない。なでしこって言葉を簡単に使わないでほしい」と冗談めかしながら、こぼしたこともあった。93年12月の15歳代表デビューから約22年。それだけ代表の責任と誇りを背負って戦い抜いてきた証しでもある。

 澤 いよいよだなという気持ちもありつつ、リラックスもしている。4年前もそうですけれど、みんなの笑顔も多くて、何かいい方向に向かっているんじゃないかな。

 苦しい時も、楽しい時も、どんな時も澤が先頭に立ち、澤が中心になって築いてきたW杯の歴史は、いよいよ最終章を迎える。

 ◆賞金 今大会は前回よりも大幅に増え優勝は200万ドル。前回は100万ドルだったから倍増となる。円に換算すると円安の影響もあって今回は約2億5000万円、前回の8000万円の約3倍だ。準優勝でも140万ドル(約1億7500万円)で、これでも前回優勝賞金の倍以上。もっとも、男子との格差は大きく14年ブラジルW杯の優勝賞金は3500万ドルで女子の20倍近く。1勝もできずに1次リーグで敗退した日本も800万ドルと、今大会優勝賞金の4倍を受け取った。