米国が史上最多3度目のW杯をバンクーバーの空に掲げた。国境を越えて駆けつけた5万人超が完全ホームの雰囲気を醸し出す中、開始わずか16分で日本を粉砕。決勝初のハットトリックで大会MVPに輝いたMFロイドは「言葉では表現できない」と興奮を抑え切れない表情で喜んだ。

 日本キラーの本領だ。前半3分、グラウンダーの右CKに飛び込み先制した。アメリカンフットボールのように統率された動きで意表を突くと、2分後も右FKからゴールを陥れた。圧巻は16分だ。ハーフウエーライン上から55メートルのロングシュートを蹴り込んだ。13分間でのハット達成は男女通じてW杯史上最速。ロンドン五輪決勝でも2得点した点取り屋がまた決めた。

 予感があった。まだW杯メンバーが発表される前、ニュージャージー州の自宅で走っていると「別の世界に入り込んだ」。その中のロイドはW杯で1試合4得点していたという。説明できない体験だったが「3点だったけど夢が現実になった」。神懸かっていた。

 エリス監督が「野獣」と親しみを込めて呼ぶ点取り屋の爆発で91、99年大会に続く3度目の頂点に返り咲いた。最後は40歳のDFランポーンを出す余裕を見せて日本に雪辱。「王国」復権を全世界に知らしめた。