日本サッカー殿堂の第16回掲額式典が、日本協会創立記念日の10日、東京・JFAハウスで行われた。

今年は3氏。初出場の98年フランス大会、16強入りした10年南アフリカ大会と2度のW杯で指揮した元日本代表監督の岡田武史氏(63=JFL・FC今治オーナー)、18年W杯ロシア大会ベスト16監督の西野朗氏(64=タイ代表監督)、11年女子W杯ドイツ大会で優勝した前なでしこジャパン監督の佐々木則夫氏(61=J2大宮トータルアドバイザー)が殿堂入りを果たした。

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幼少時を思い返せば、殿堂入りは不思議な感覚だった。岡田氏は笑顔で「昔はプロ野球選手になりたかった。南海ホークスの子供会に入ってて、中学からサッカー始めて代表なんて今はあり得ないでしょ」。国際Aマッチ出場24試合のDFは引退後「古河電工の社長を目指して」社業に専念しようとしたが、辞令は「人事部付コーチ」。7年後、41歳の時に「ジョホールバルの歓喜」で日本を初のW杯に導いた。横浜でJリーグ2連覇した後、10年W杯で16強入り。中国にも挑戦と当然の殿堂入りだった。

現在はFC今治で60人の社員を抱え、来季J3昇格を目指す。日本協会の副会長だった昨年、監督業に必要なS級ライセンスを“返納”。「経営の方が忙しくて、楽しくて、なかなか現場がイメージできなくなった」。戦術・育成の型「岡田メソッド」を研ぎ澄ましながら、現在2位のJFLで優勝を狙わせ、近未来のJ2スタジアム建設へ50億円の資金調達に走る。現場復帰は「ない! 自分の限界は自分で分かる」と断言するのも納得の日々だ。

それでも監督としての功績は色あせない。自身を先頭に、長足の進歩を遂げた日本サッカー。この日、W杯2次予選の初戦を迎えた森保ジャパンについて「そんなに厳しくないよ」と言った。協会のシニアアドバイザーとして5日パラグアイ戦を生観戦。「(中島)翔哉、堂安、南野に大迫。ここまで個で通用する代表はなかった」と賛辞を贈り「2次予選の相手なら研究されたって、ぶち破れる。ただ、老婆心というか余計なお世話だろうけど…」。

付け加えたのは「個のチームは、この先の最終予選や世界の強豪に研究された時、抑えられてしまうことがある。そこで『どうしよう』となるのが怖い。もっと強い相手と戦っておきたいね」。一方で「ポイチ(森保監督)は勝つ手を考えているはず。生き生きしていてワクワクする代表。たいしたもんだ」とエールを送った。まだ63歳。レジェンドとして、今後も日本のために忌憚(きたん)なく意見していく。【木下淳】