女子サッカー界にとって節目の21年が幕を開けた。11年の女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で初優勝してから、今年で10年を迎える。9月には国内初の女子プロリーグ「WEリーグ」も開幕予定で、選手たちにとっても大きな変革の1年となる。

なでしこジャパン(女子日本代表)は7月に、1年延期となった東京オリンピック(五輪)を控える。高倉麻子監督(52)は新年を前に合同取材に応じ、節目の1年の展望を語った。【杉山理紗】

◇◇  ◇◇

W杯初優勝から10年目の今年、くしくも日本で五輪が開催されることになった。高倉監督は「11年の優勝から女子サッカーの認知度、注目度、期待度は大きく変わったと思う。(当時)現場では、米国の監督から『おめでとう』と一緒に『これからが大変だよ』という言葉をもらった。まさにそれを実感する10年だった」と振り返る。

この10年、日本女子サッカー界は浮き沈みを繰り返してきた。12年、ロンドン五輪準優勝。14年、U-17W杯優勝。15年、W杯カナダ大会準優勝。16年、リオ五輪出場ならず。18年、U-20W杯優勝。19年、W杯フランス大会ベスト16…。年代別代表では主要タイトルを獲得した一方、年齢制限のない代表では、11年を超える成績を収められなかった。「『1位でなければ許してくれない、強くなければ見向きもされずにたたかれる。それを30年続けてきた。日本もそういう時代になっていくんじゃない』、という意味で言ってくれたと思う。優勝しないと誰も評価してくれないだろうし、優勝したとしても、11年ほどの盛り上がりはもうないでしょう、という話もされる。今の選手たちは難しい立場ではあると思う」と、高倉監督も結果を残し続けること、注目を浴び続けることの難しさを理解する。ただ「ネガティブなことではなく、そういった立場、存在になれたことを喜びとして、みんなで力強く進んで行けたらいい」と、強い気持ちで受け止める。

◇◇  ◇◇

新型コロナの影響で、20年は3月のシービリーブス杯(米国)を最後に代表活動が止まり、高倉監督も自宅で過ごす時間が長くなった。「選手のときからサッカーに携わり、基本的には足を止めずに走ってきた。家にいる時間が多くある中で、自分自身がサッカーを見たり、本を読む時間が多かった。海外の指導者やチームの歴史などをあらためて勉強する中で、自分の中に入ってきたものはいろいろある」。予定外に生まれた時間を有効活用して、雌伏の時を過ごしてきた。

10月には待ちに待った代表活動が再開。11月の代表候補合宿とあわせて新たに6選手を初招集し、「予想以上のパフォーマンスをしてくれた、うれしい誤算」と選手選考の幅も広げた。「熱を持って何かを成し遂げる熱い思いが、また日本にやってくる。日本で開催できることに喜びや運命を感じながら、やっていけたら。サッカーに興味のない人にも、パッとチャンネルをつけたときに、必死に戦う姿から何かを伝えることができれば、こんなうれしいことはない。そういう存在になれるように、みんなと頑張っていきたい」。あのときのように、日本に元気を与える活躍を-。勝負の1年が今、始まる。