元サラリーマン選手が、五輪の舞台へ羽ばたく。来年のロンドン五輪出場を目指すU-22(22歳以下)日本代表は、今日1日に同オーストラリア代表と親善試合を行う。5月31日は新潟県内で最終調整し、DF村松大輔(21=清水)の先発起用が濃厚になった。高校卒業後はプロでなく、JFLのホンダFCでプレー。関塚隆監督(50)に本名の「たいすけ」でなく「だいすけ」と勘違いされる苦労人が、ハードタックルでチャンスを生かす。

 日本海の強風を浴びながら、タイスケが越後の地で躍動した。A代表との“親子ゲーム”で注目度も高いオーストラリア戦。関塚ジャパンのセンターバック(CB)を任されるのは、元サラリーマンの村松だ。この日の紅白戦ではDF浜田とのコンビでプレー。ロンドン五輪へと駆け上がる階段に、気合を高めた。

 村松

 相手は190センチを超える選手もいて、高いけどボールもつなぐ。FWに起点をつくらせないようにしたい。いいプレーを見せることがいろんな人への恩返しになりますから。

 3年前は自動車工場にいた。静岡・藤枝東から進んだのは、JFLのホンダFC。「最初に声をかけてもらった」と義理を通した進路だった。プロではないため、午前8時から車の「ファイナルギア」と呼ばれる減速ギアを製作。ラインでボタンを押す単純作業だった。「毎朝『仕事乗り切ろう』と思っていた。地味だけど、いなくちゃいけない存在という意味ではサッカーにも通じる」。1年でJ2湘南に声をかけられた。

 関塚監督には「ダイスケ」と呼ばれる。本当は近所の神主さんに名付けられたという「タイスケ」。「今日は必ず『タイスケです』と言おうと思ってたんですが…」。前日30日には、新潟駅で高校の先輩である日本代表MF長谷部に会った。握手して「頑張れよ」と声をかけられたが「たぶん後輩と分かっておられないです」。チーム内外に名を売る、絶好の機会だ。

 3月下旬のウズベキスタン遠征での右膝負傷から、2カ月で代表復帰。ボランチやサイドバックもできるが、関塚監督には左ふくらはぎ痛で離脱したDF鈴木大輔(だいすけ、新潟)の代わりに、CB起用を告げられたという。「いろんなポジションをできるのも強み。相手から見れば体は小さいけど、その心のスキを狙いたい」。ダイスケの代役には終わらない。【近間康隆】