<アルガルベ杯:日本3-4ドイツ>◇アルガルベ・スタジアム

 【ファロ(ポルトガル)鎌田直秀】なでしこジャパンが、たくましく散った。FIFAランキング3位の日本が同2位ドイツに敗れ、準優勝に終わった。大黒柱MF沢穂希(33=INAC神戸)を体調不良のため2試合連続で欠く中、2度リードされながら追いつく粘りを披露。終了間際に決勝点を奪われ力尽きたが、この日も佐々木則夫監督(53)は主力と控えを交ぜたテストと勝負を並行した選手起用を貫いた。敗れたとはいえ、世界屈指の強豪ドイツと互角に戦えたことは、悲願のロンドン五輪金メダルへ、大きな収穫となった。

 ぼうぜんとした表情を浮かべた、なでしこイレブンがピッチに立ち尽くした。FW永里優季(24=ポツダム)の同点弾からわずか1分後の後半46分。ロングボールからDFラインの裏を取られ、まさかの決勝点を許した。最後まで勝利のみを目指したからこそ、現実が信じられなかった。

 昨年7月の女子W杯制覇以来、無敗のなでしこジャパンが初めて喫した敗北。佐々木監督は「なかなか結果が出なくて申し訳ない」と謝罪の言葉さえ口にした。ただ、負けられない重圧やプライドを背負った世界女王は「初黒星」以上の収穫を今大会で得た。

 佐々木監督が「出だしのリズムが取れなくて失点してしまった。出だしが遅かった」と振り返ったように、前半20分と同22分に連続失点を奪われてしまった。これまでなら、浮足だってもおかしくない場面だったが、なでしこたちはたくましかった。

 同35分にエースMF川澄が鮮やかなゴールを突き刺すと、息を吹き返す。後半10分には途中交代のDF田中がFW永里のそれたシュートをスライディングで押し込み同点。指揮官が「いい意味で最後の粘りが出ていた」と話した、わずか3分間のドラマが終盤に待っていた。

 同43分にPKを決められ突き放され、一時は敗戦濃厚となったが、なんと同45分に途中交代のFW高瀬のクロスを、相手GKがこぼし、FW永里が詰めて再び同点に追い付く。逆転ゴールを狙い、チーム全体の気持ちが前へ前へ傾いた同46分、想定外の決勝点を決められたが、世界中に「女王の粘り強さ」を誇示してみせた。

 女子W杯準々決勝で、日本はドイツを破り、ロンドン五輪出場権をなくしたドイツは世代交代が進む。それでもドイツのレベルは世界屈指。その強豪と大黒柱の沢抜きで対等に戦った。不動のセンターバック(CB)コンビの岩清水、熊谷を並べず、宇津木と2人の組み合わせを前後半でテスト。サイドバックもDF有吉を前半は右サイド、後半は左サイド、普段は攻撃的MF宮間を前半はボランチで起用する新たな布陣を試した。

 大会自体を振り返っても、2日のデンマーク戦ではFW菅沢が先制点を奪取。5日の米国戦ではFW高瀬がボランチで途中出場して決勝点。この日は途中交代の田中がゴールを挙げるなど、「日替わりヒロイン」が登場した。

 佐々木監督はこの日の試合後「もう少し選手を試したかったけど、均衡した試合になったので勝負にこだわりすぎた」と話したが、五輪本番に向けて確実な底上げに成功した。

 女子W杯と五輪を連続で制した国が過去にないほど、「連覇」は困難を極める。それほどの高い壁を越えるためには、さまざまなハプニングが待ち受けているはずだ。沢が不在でも、川澄が不在でも、CBの1人が欠けていても、五輪本番では動じずに勝ち抜かなければならない。

 4月の親善試合で米国、ブラジルの強豪と対戦、7月のドイツ合宿ではドイツと再戦する予定。「改善しなければいけないところは多く残ったけど、いい準備はできた。日本で米国とブラジルとできるので、さらにステップアップしたい」と佐々木監督。なでしこジャパンの視線の先には、金メダルが明確に映っている。