青森山田が得意の「飛び道具」を駆使して、桐光学園(神奈川)に劇的勝利を挙げた。2点ビハインドの後半ロスタイムに2点を決めて同点に追いつき、PK戦で退けた。後半42分に1点返した3分後のラストワンプレーで、DF原山海里(3年)のロングスローから、MF吉田開(3年)が直接頭で押し込んだ。今大会、10点中4点の起点となった原山のロングスローで、8強に進出した。

 ありったけの力を込めた。ロスタイムは、すでに表示された4分を経過。ラストワンプレーで原山は、得意のロングスローにすべてを託した。「ボールがぬれてすべりそうだったので、思い切り投げた。信じられない」。左コーナーエリア7メートル付近のサイドラインからゴール中央約35メートルまで投げ込み、頭で合わせた吉田の劇的同点弾を引き出した。PK戦では5人目のキッカーとして決めた瞬間、右手人さし指を突き出しスタンドへ走りだし、喜びを爆発させた。

 脅威の飛び道具だ。今大会3試合で10得点中、4点が原山のロングスローから生まれた。黒田剛監督(45)は「最後は武器が多いほうが勝つ。奇跡です」と興奮冷めやらぬ様子で振り返った。前日2日の聖和学園戦ではハーフタイムに「飛ばしすぎだぞ」と怒るぐらい、今大会の原山の肩は絶好調だ。

 コツコツ練習して、自分の武器にした。小学校ではファウルスローを多発し、当時の監督に命じられ壁に向かって投げて矯正した。中学ではクマガヤSCの富岡信吾監督(44)の下、週5日の練習で欠かさず投げ込んだ。富岡監督は「自分の武器になるぞと声をかけました。当時から飛ばしていたんですが、中3の夏の試合でいきなりゴール前まで投げ込んで、得点につながった時はびっくりしました」。山なりとライナーの2種類を使い分け、今では最長で約40メートルは飛ばす。

 準優勝した09年度大会以来の8強進出に、原山は肩を回した。「まだまだ投げられる。今年は最後の最後に奇跡を起こせるチーム」。同校初Vは原山の双肩に懸かっている。【高橋洋平】