川崎FがFW大久保嘉人(33)のJ1通算159点目となる劇的ロスタイム弾で首位に返り咲いた。

 序盤から鳥栖の出足の速いプレスに苦しみ、持ち味のパスサッカーが封じられた。引き分け目前の最後の攻撃でドラマは起こった。途中出場のU-23(23歳以下)日本代表のMF原川力(22)が起点となりMF田坂祐介(30)へパスを送る。田坂から日本代表FW小林悠(28)へつながり、小林は「(ファーに)絶対に(大久保)嘉人さんがいるはず」と迷わず、エリア内左からノールックでクロスを上げた。大久保が頭で押し込み、貴重な勝ち点3をもぎ取った。

 大久保は「後半に2本、決定機を外してあきらめかけていた。それでも最後、来ると思って。地獄から天国にはい上がりました」と振り返った。得点直後は、難病と闘う親友を激励するTシャツを掲げた。Tシャツには「負けるな 落水」と激励のメッセージが書かれていた。小学時代の同級生でともにサッカーをやっていた落水洋介さん(33)が原発性側索硬化症と闘っている。3月中旬に親友の闘病を聞いた大久保は「得点を取ったらメッセージを贈る」と約束していた。3月12日の名古屋戦で得点を決めたが、同点弾だったためお預けにしていた。「やっとできた。ホッとしました」と話していた。