プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月24日付紙面を振り返ります。1992年の1面(東京版)は読売のナビスコ杯制覇を報じました。

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<ナビスコ杯:読売1-0清水>◇決勝◇23日◇東京・国立競技場◇観衆5万6000人

 カズ(三浦知良=25)がプロ初の王座に輝いた。

 読売SCのエース、カズは後半12分、戸塚哲也(31)からのパスを受け、清水FCを1-0と下す決勝ゴールをマーク。大会通算10得点で、MVPにも選出され、賞金100万円を獲得した。読売には優勝賞金5000万円が、清水には準優勝賞金2000万円が贈られた。

 冷静だった。清水DF陣のわずかなミスを見逃さなかった。戸塚からのパスを受けてペナルティーエリアに入った。詰めて来る清水DF内藤を、右足でボールを動かし左にかわした。左足が勢いよく振られた。飛び出したGK真田の横を抜けて、シュートはゴールネットに刺さった。

 「落ち着いて蹴れた。DFの動きもはっきりと見えた。今大会は、プレーの中で余裕を持ってやれた。清水は素晴らしく、気合も入っていたけれど、勝ててうれしい」。

日本代表のエースとして優勝したアジアカップの疲れは残っている。それでも、決めたのはカズだった。

 4試合連続無失点の鉄壁DF陣が清水の攻撃に耐え、相手のパスを都並がカットしてつくったチャンスを、ゴールにした。

 「プロの初代王座ということは意識した。でも、優勝できたのはみんなのおかげ。多くのファンが、声援してくれることもうれしかった」。

 今春終わった最後の日本リーグでMVPになり、日本代表では東アジアNO・1になった8月のダイナスティ杯、アジアを制した今月のアジア杯で連続MVPに輝いた。今大会でも、初戦は欠場したものの、出場した10試合で10ゴール。チーム総得点(20)の半分を一人で稼ぎ、文句なくMVPに選出された。

 「MVPは、チームのみんなが取らせてくれるもの。でも、こういう賞は最高の励みになる。得点は、たまたましているだけ。点が取れない時でも、数字に表れないチームへの貢献ができれば……」。

 この日の相手の清水は、因縁深いチーム。今春には、清水移籍か読売残留かで悩み抜いた。結局、「自分の力を最も発揮できるところで」と残留したが、自らの活躍でその選択が正しかったことを証明してみせた。注目された兄・泰年との対決も、予選リーグに続いて2連勝した。

 「ヤスさん(カズは兄をそう呼ぶ)と決勝ができるのはうれしい。自分がサッカーを続けているのも、ヤスさんのおかげ。いなかったら、とっくにやめていた。でも、試合になれば兄弟は関係ないよ」。乗りまくっているカズは、私生活でも絶好調だ。

決勝ゴールの後見せた小さな投げキスは、もちろん来夏結婚する設楽(したら)りさ子(本名理佐子さん=24)へのもの。「来た試合は負けたことがない」という設楽の応援に燃えないはずはない。

 「いいことが続くけれど、もっと上を目指してやる。次は天皇杯、来年はW杯予選、Jリーグの開幕もある。もっともっと頑張るよ」。

プロ初の王座を、自らの足でもぎ取ったカズ。「カズによる、カズのための、カズの大会」を制したサッカー界のスーパースターは、新たな目標に向けて前進する。

 ◆フィアンセ設楽、スタンドで声援

 メーンスタンドで、カズの婚約者設楽りさ子が声援を送った。ハーフタイムに報道陣が殺到。一般観客も詰め掛けて騒ぎとなったため、警備員に付き添われ最上階の放送用バルコニーに移動した。カズが劇的ゴールを挙げると、跳び上がって拍手。設楽の座っていたあたりを目がけ投げキスをするカズに苦笑しながら、いつまでも手を振っていた。優勝、そしてカズの4冠にが決まると、「今年は本当によい年になりました。ケガに気をつけて来年も頑張ってください」と幸せそうに話していた。

※記録と表記は当時のもの