浦和レッズの栄光の陰には、ピッチ内外で選手を支えた人物の存在もあった。7月の監督交代に合わせて、下部組織から昇格した山田栄一郎コーチ(46)だ。

 分析担当として加わった山田コーチはミーティングで使用する映像を一新した。それまでは数年前にチームが好調だったころの映像ばかりで「今はもう選手も変わっているし…」と戸惑う声もあった。山田コーチは96年に横浜で現役引退し、講談社のグループ会社で映像出版の仕事に14年間従事した。動画編集はお手のもので、スローモーションやテロップ、マーキングなどさまざまな工夫をこらし、次に臨む試合の焦点を明確にした。DF槙野は「時間も短縮されたし、劇的に変わった」と感謝した。

 ACL準決勝でチームが上海上港と対戦している10月18日には1人オマーンへ飛んだ。西地区準決勝のアルヒラル-ペルセポリス戦を分析するためで、ノート数ページを埋めるメモを取りながら映像を入手。帰国後すぐに編集し、決勝に向けて選手へ最新情報を提供した。「(編集作業で)あまり寝られない時もあるけど、浦和の選手たちは伝えたことをすぐに、それも高いクオリティーで再現できる。やりがいがあります」。

 試合ではベンチに入ることはない。この日は5階スタンドから見守った。優勝を告げる笛とともに堀監督と選手たちがピッチでもみくちゃになるのを見届けると、ひっそりとスタンドをあとにした。【岡崎悠利】