J3参入初年度のアスルクラロ沼津は、3位でシーズンを終えた。勝てば優勝が決まる栃木SCとの直接対決は1-1。前半7分にFW薗田卓馬(24)が先制点を挙げたが、後半32分に同点ゴールを献上した。クラブはJ2ライセンス条件を満たしていないため、J2自動昇格圏内の2位でもJ3のままだった。それでも、全力プレーを貫き、シーズンを終了。現状で、最短となる2020年のJ2参戦に向けて確かな1歩を踏み出した。

 1点が重くのしかかった。沼津は前半7分、右クロスをFW薗田がヘディングで合わせて先制点。エースの6試合ぶりゴールで幸先よくリードした。その後は体を張った守備で耐えしのいだ。だが、後半32分にセットプレーの流れから同点ゴールを献上。追加点を狙い最後はGKも含めた11人が敵陣に入ったが、ゴールが遠かった。

 無情のホイッスルが鳴ると、選手たちはぼうぜんと立ち尽くした。薗田は号泣していた。主将のDF尾崎英一郎(32)も気丈に振る舞ったが、整列では顔を上げられなかった。尾崎は「悔しい」とポツリ。2位でJ2昇格を決めた栃木の選手たちは、サポーターと歓喜した。優勝を懸けた直接対決で、両者のコントラストは鮮明に分かれた。

 今季途中にJ2ライセンス取得に向けた申請ができず、2位以内でも昇格ができなくなった。それでも、選手たちが全力で戦い続けられたのは、地域の熱い応援があったからだ。沼津市内の飲食店では、仕事をしながらプレーする選手をサポートすべく、格安で食事をできるサービスが始まった。当初は数店舗だったが、今では数十店が協力するようになったという。薗田は「どこに行っても『頑張って』と声をかけられる。その思いが僕らの力になりました」と明かした。

 J2ライセンス取得で最大の壁になっている「スタジアム問題」は、来季中の改修に向けて行政も前向きに検討しているという。ライセンスを取得して成績が伴えば、最短で2020年にJ2参入が決まる。吉田謙監督(47)は、続投が決定的な来季に向けて決意を示した。「優勝を逃したこの試合が、昇格に向けた第1歩だと思います」。

 クラブ史上最多8649人が駆けつけた今季最終節。優勝は逃すも、選手たちの勇姿はサポーターの目に焼きついたはずだ。来季こそは優勝して昇格。悔しさと手応えを胸に、沼津は地域とともに走り続ける。【神谷亮磨】