仙台育英(宮城)のFW佐藤一輝(3年)が、今大会第1号ハットトリックを達成した。高松商(香川)戦の前半5分に左足で先制点を奪い、同ロスタイムにも頭で押し込んだ。2-2の後半ロスタイムにはFKから決勝ヘッドを決めた。今大会の応援リーダーで、首都圏開催となった76年度大会以降の1大会最多10得点をマークした鹿児島城西FW大迫(現ケルン)を超える、史上最強得点王に名乗りを上げた。

 仙台育英の佐藤一が窮地を救った。2-2の後半ロスタイム。居残り練習の半分以上を費やしてきたセットプレー。途中出場のFW結城を呼んだ。「あれをやろう」。苦しい場面でこその得意技。マークしようとする選手に味方が体を預けて動きを止める間に、その裏のスペースにフリーで頭から飛び込んだ。「緊迫した場面でこそ自信があった。ずっと楽しみながら試合ができた。今までで一番良いゴールだった」と笑顔を見せた。

 試合前に家族のグループLINEに「今大会NO・1ストライカー佐藤一輝 一番輝いてきます」と送った。母敬子さんから即座に「有言実行!!」の返信。勝利の瞬間は家族の見守る応援席に向かって、ガッツポーズ。「この名前がとても気に入っています。今日は名前の通りになれたかな」。3得点に胸を張った。

 仙台ジュニアユース(JY)からユース昇格の内定を得たが、断って入学を決断した。「ライバルと全国大会で戦いたい。負けたくない」。同JYの“同級生”で神戸内定のMF郷家が青森山田を選択したから。スランプもあって17年夏に先発から外されたが、大迫や岡崎のゴール映像を毎日見て、泥臭さを自らに求めた。9月にはU-19セリエB代表戦で、こぼれ球を押し込むなど2得点。「あの試合が自信になった。イタリア人からゴール前の激しさも学びました。あれがあったから今があります」。

 こぼれ球を左足で押し込む1点目。がむしゃらに頭で押し込んだ2点目。思い描いた3点目のダイビングヘッド。「大迫さんや、岡崎さんのように泥臭く得点王になりたい。大迫さんの得点も超えたい」。家族のため。決勝で宿敵を倒すため。得点への執着心は半端ではない。【鎌田直秀】