<半端ない青春~高校サッカー・クローズアップ>

 高川学園(山口)は粘ったが、1-2で長崎総合科学大付に惜敗した。前半で2失点し、江本孝監督(33)から「けんかを売ってこい」とハッパをかけられた後半は押し込んだが、及ばなかった。敗れたものの、イレブンの自立生活には目を見張るものがある。部内に10の「部署」があり、100人を超える部員がそれぞれ所属している。目を引くのが「農業部」だ。練習場の周辺に畑の畝(うね)を15ほど持ち、タマネギや大根に里イモ、ホウレンソウなど季節の野菜を栽培している。無農薬で、土壌整備や水やりなどすべて農業部を中心に部員が行う。

 できた野菜は寮や家でみそ汁の具やおかずに使い、選手の血となり、肉となる。初戦で得点したFW山本廉は同校の付属中出身で、中学時代から高川学園の野菜を食べて育った。身長181センチの2年生は「背が伸びたのは野菜のおかげもあるかもしれません」と話す。

 さらに自分たちで食べるだけでなく、練習試合などで一般向けに販売も行う。売り上げは部費として、分析機材の購入などに充てられる。食事だけでなく、部活動の質を高める収入源にもなっている。部署制を考案した江本監督は「社会に出たときに自立する糧になるものを培ってほしいと考えた」と語った。他にも練習メニューを考える強化部、渉外担当の「おもてなし部」など、選手が主体となって部を支えている。【岡崎悠利】