矢板中央(栃木)が伝統の「堅守速攻スタイル」で神村学園(鹿児島)に競り勝ち、6大会ぶりに8強進出を決めた。

 前半15分、左CKからMF稲見哲行主将(3年)の2戦連発弾で先制。その後は神村学園の猛攻を受けながらも、最後の最後で体を張り、無失点で切り抜けた。前日の三重(三重)戦では2失点し、高橋健二監督は「守備面で昨日より成長できた。しっかり体を張る矢板中央らしい守備ができた」と振り返った。

 本年度は春の新人戦県大会、夏の総体県予選と、ライバルの真岡の前に散った。要所で勝ちきることができず、指揮官は「堅守速攻」から「ポゼッション」の変更を試すなど、ぶれた時期もあったという。

 稲見もチームがばらばらになり、主将としてどう振る舞うべきか、苦悩の日々を送っていた。その稲見が2戦連発弾でチームを救った。

 就任24年目の高橋監督は「苦労したと思うけど、よくここまでチームを育ててくれた」とし「新人戦、総体と矢板中央の歴史の中で勝てないチームだったけど、それが勝てるようになって…。ほめてあげたいなと」と男泣きした。

 指揮官と主将、選手が長いトンネルをさまよっていた苦境の時期、「堅守速攻」の原点回帰のきっかけになったのが全国ユース(U-18)フットサル大会だった。

 高橋監督は、稲見をコーチ兼選手に任命し、公式戦出場の少ない2年生に経験を積ませるため、同大会の出場を勧めたのだ。栃木県予選、関東予選を勝ち抜き8月に全国大会の切符をつかむと、全国でも初出場で初優勝に輝いた。指揮官は「勝てない時期に日本一をとれて。その影響も大きかったと思う。攻守の切り替えの速さ、ゴール前の密集の部分でも生きたと思う。あの大会に出てなかったらこの結果はなかったかもしれない。こういう部分できっかけになるんですね」。フットサルとの二刀流で原点回帰した矢板中央は、ベスト4進出をかけ、5日に日本文理(新潟)と対戦する。