元日本代表監督で鹿島アントラーズのテクニカルディレクターに復帰したジーコ氏(65)が4日、茨城県鹿嶋市内で行われたチーム練習に合流した。冒頭で選手らに訓示し、練習では選手の動きを視察。16年ぶりに身に着けた鹿島の練習着姿で、ちょっぴり? おなかは出てきたものの、練習場の空気を一変させた。リーグで9位に低迷する常勝軍団に、闘う意識を取り戻させようとした。

 スタッフとして、そこにいる。ジーコ氏が目を光らせている。それだけで、鹿島の練習の空気がいつもと違った。はたから見ていたDF昌子が言う。「連戦でしんどいはずやけど、いつもの練習より走れていた。それはあの人がおる、という『存在』だと思う」。

 練習中、ジーコ氏は静かに見つめていた。ただ1度、後方のパス回しからクロスを上げるシュート練習の際、DF内田にFWの選手への伝言を頼んだ。「簡単なゴールを決めなさい」。

 GKしかいない中で、精度が低かった。そこでの指摘。ジーコ氏に言われるだけで重みが違った。内田は「おっしゃる通りです」と苦笑いするしかなかった。

 16年ぶりに復帰した鹿島で最初に伝えたことがある。「どんな試合でも勝つことだ」。そして「このチームは全て1位じゃないと意味がない」とも加えた。Jリーグが始まる1年前、鹿島を一からつくりあげた。あれから26年。最多19冠を獲得してきた常勝軍団は今、リーグ9位に甘んじる。

 「タレントがあってもハートがなければ無意味な存在になる」。闘う心、勝利の追求-。全体練習後、FKを練習していたMF小笠原から「見本を見せてよ」とせがまれると「残念だけど、おなかがちょっと出始めて最近練習できていないから、もう少し待って。練習して、体をつくって蹴れるようにするから」と断った。笑顔の裏に“65歳”の負けず嫌いが表れていた。

 イニエスタ、フェルナンドトーレスが加わり、Jリーグは競争が一段と増した。「そうなる時代に半端ない味方がついた」。昌子の言葉は、鹿島全員の声を代弁していた。【今村健人】