初出場、瀬戸内(広島)の無欲の快進撃は、4強の壁に阻まれた。07年度の選手権優勝校・流経大柏(千葉)に0-5の大敗。立ち上がり10分に2失点し、その後も圧倒的に攻め込まれた。しかし、安藤正晴監督(46)は胸を張る。

「弱小チームからスタートして、初めて県予選を突破してからも、成長し続けてくれた。最後まで自分たちのサッカー、ボールを動かして運んでいくサッカーを、90分間通してチャレンジできた。5失点で勝負は決まってしまうが、80分過ぎても必死に追いかけて走り続けた。感動で胸が熱くなった」

体格差を含め、個人の技術力の差は明白だった。しかし、全員で食らいついた。MF佐々木達也主将(3年)は「最後まで自分たちのサッカーをやり遂げた。応援してくれる人がたくさんいるのに、あきらめてはダメ。何点とられようが、1点をとりにいこうと。みんなで声をかけながら走れた」と笑顔で言った。

佐々木主将の選手宣誓で始まった大会。昨年7月に西日本を襲った豪雨災害。被災者への思いを言葉にこめた。チームの中で被災した者はいなかったが、全員で被災地へ行きボランティア活動を行った。

「ボランティア活動をした中で、何か恩返しをしたい。自分たちができるのはサッカー。選手権に対する思いが強くなった」

一気に強まった結束力で、7度目の挑戦だった広島県予選決勝の壁をついに打ち破り、全国へ進んできた。

瀬戸内にとっては歴史の始まり。試合後のロッカーで佐々木は「来年は頑張れ」と後輩に言った。今大会3得点のFW中川歩夢(2年)は「来年もこの舞台に立って、優勝を狙いたい。3年に結果で恩返しをしたい」と誓った。