尚志、福島県の初優勝は、来年度に持ち越された。仲村浩二監督(46)は「とにかくつないで、相手の背後に出すウチのサッカーは出せた。僕は今後もぶれないでやります」。惜敗に悔しさをにじませつつ、頂点への手応えもつかんだ。

11年度大会で初の4強。東日本大震災で甚大な被害を受けた福島に、勇気を届けた。今大会は5大会連続10度目となったが、躍進には仲村監督が習志野(千葉)時にコーチとして指導を受けた、小室雅弘コーチとの師弟融合も大きかった。流通経大柏コーチ時には本田裕一郎監督の参謀として07年度日本一を経験した勝者のイズムも注入された。

サッカー界から一時身を引き、タクシー運転手で生計を立てていた同コーチにオファーし、就任したのが17年11月。小室コーチは「ずっと全国制覇を狙えるチームだと思っていたが、1、2回戦を勝てば良いくらいの気持ちで選手がいた」。私生活から見直し、朝練も選手より早くグラウンドに立って表情を見つめた。MF加瀬直輝(3年)は「眠い顔していたら怒鳴ってくれる。全国への目標にも目を覚まさせてくれる」。技術面は基本を土台に「遊ぶプレー」の徹底だった。

来季はプレミアリーグEAST昇格が決定している。今大会5得点の染野も残る。青森山田の王座を脅かす存在が誕生したことは、間違いない。【鎌田直秀】