15位浦和レッズが、勝ち点4差の16位サガン鳥栖との直接対決で引き分けた。2-3で迎えた後半ロスタイムにFW杉本のPKで追いつき勝ち点4差は守ったが、残留争いから抜け出せなかった。

浦和が敵地に乗り込んだ序盤、2度の鳥栖のチャンスをしのいだ後にまず先制した。前半7分、ロングボール争いに右ウイングバック橋岡が頭で競り勝ってFWファブリシオへ。FW武藤へつなぎ、フリーでGKと1対1になるや左足を振ってゴール右へ決めた。

チーム最多11得点のFW興梠が負傷欠場。チームも25日に天皇杯4回戦でJFLのHonda FCに敗れ、サポーターの“バス囲み”騒動があった直後だけに、総力戦で大きな1点目をもぎ取った。武藤にとっても、残留争いの大一番で今季初ゴール。背水の浦和が勢いに乗った。

さらに2点目だ。29分、橋岡が右サイドから柔らかいクロスを送ると、MF長沢がスーパー弾を決めた。走り込みながら体を回転させ、右足オーバーヘッド。空中で完璧にボールをとらえてゴール左へ蹴り込み、リードを広げた。長沢は、チームがリーグ戦で最後に勝った7月20日のホーム・ジュビロ磐田戦(3-1)以来の今シーズン3ゴール目となった。

一方、勝ち点4差で浦和を追う鳥栖も金崎、クエンカ、金森の3FWを中心に攻めて浦和ゴールに迫っているが、浦和に押され始めた。25分には飲水タイムが設けられるなど、気温34度の鳥栖で熱戦が繰り広げられている。37分には右CKに金崎が頭で合わせたが、ジャストミートせずGK西川にキャッチされた。

浦和は後半、なお気合を入れた。ハーフタイムに大槻監督が鼓舞した。「前に出てくるのは敵じゃない。オレたちの一番の敵は自分自身だ。2点リードで大丈夫だ、これくらいでいい、そういう気持ちが一番の敵になる」「サポーターの前で引きこもるのか。彼らにお前たちのプレーをしっかり見せよう!!」。ゲーム主将を務めるDF槙野を中心に体を張って鳥栖の攻撃を止め続け、後半20分過ぎまで2-0とリードした。

しかし、残留へ負けられない鳥栖も引くわけにはいかない。後半開始と同時にMF松岡からレジェンドFW豊田に交代して勝負に出る。石川・星稜高の後輩、浦和DF鈴木大と激しくマッチアップして士気を高めた。そして24分、1点を返した。ペナルティーエリアの右角付近で豊田がMF関根に倒されて直接FKを得ると、蹴るのはリオ五輪代表MF原川。右足でゴール右上隅に蹴り込む、こちらもスーパーゴールで1点差に追い上げた。直後も豊田に2度、決定機があり、スタジアムは沸騰。ついには29分、ゴール前の混戦からFW金崎が右足でゴール右へ、決めた。わずか5分で追いついて意地を見せた。激戦は2-2で終盤戦に突入した。

もう流れは止まらない。勝ち越し点を決めたのは鳥栖だった。37分、ゴール前を連係で崩して最後はクエンカ。うまくDFの前に入り、右クロスにダイレクトで右足を合わせてゴール右に決めて、ついに試合をひっくり返した。

このまま終わるか、見えた後半ロスタイム。浦和がパワープレーでPKを獲得した。蹴るのは途中出場のFW杉本。3日前の天皇杯でPKを外してサポーターの怒りを買った男が、GKと反対のゴール右に決めて追いついた。“裏天王山”は死闘となり、最後は3-3の痛み分けで決着した。