J2横浜FCのMF中村俊輔(41)は、CKをPK獲得のファウルにつなげて勝利に貢献した。

J1磐田から移籍して半年弱、キャリア初のJ2でのシーズンを終えて「カテゴリーを落としたと認めた葛藤があった。その後なかなか試合に出られず、ベンチ外。『J3か引退しかない』という危機感、というか恐怖を味わったから、また長くやってて良かった」と充実感をにじませた。

加入直後は、チームのスタイルに合わせることに苦労した。ボールを触ってリズムをつくっていくスタイルだけではなく、自身が相手のマークを引きつけ、2列目のスピードある選手を生かす戦術も求められた。「立ち位置を考えるのは難しい。今まで、そんなこと考えてやったことなかったから」。41歳にして新しいボランチの引き出しをつくる作業も「サッカーで悩めるのは幸せ」と前向きにとらえた。

10月に入っても金沢戦、京都戦とベンチ外。41歳はそこで腐らず「吹っ切れた」という。「ここの(サッカー)に合わせようというより、下さん(下平監督)が求めていることと、もともと自分のトップ下の感覚とを織り交ぜたら、ベンチ外の練習でだんだんフィットしてきた」。10月27日の東京V戦でベンチ外から一転、先発に抜てきされた。加入当初は恥骨や足首に不安を抱えていたが、下平監督が中村の戦術理解とコンディション上昇を確信した上での起用だった。そこから全試合先発を果たし、J1昇格のピッチでも大役を任された。

ボランチで定位置を獲得しつつある一方、常にチーム内にあった競争は「J1に上がるのを上回るプレッシャーだった」という。「これが理想ではないけど、能力がないならこうして試合に出るしかない。自分で認めてやるところはやるけど、諦めたくはない」。ボランチとして開眼した中村は来季、J1でもう一花咲かせるつもりだ。【杉山理紗】