北海道コンサドーレ札幌FW鈴木武蔵(25)の日本代表初ゴールの影には、恩師の支えがあった。今季リーグ戦13得点、カップ戦7得点を挙げたチーム得点王は、10日の東アジアE-1選手権中国戦(韓国)で代表6戦目で初得点を決めた。17年から個人トレーナーを務める小倉義人氏(43)に、成長を遂げた鈴木との二人三脚での歩みを聞いた。【聞き手=保坂果那】

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-代表初ゴールは

小倉氏 自宅で見ていて叫びました。うれしかったですね。LINE(ライン)したら「やっと取れました。ありがとうございます」と、絵文字がいっぱいついた返事が来ました。ほっとしたんじゃないですか。

-出会いは

小倉氏 17年4月に知人の紹介で。当時は新潟。16年リオデジャネイロ五輪後、慢性的に太ももの肉離れを起こし、悩んでいたらしくて。当時は「このまま引退になっちゃうかも」って思っていたらしい。かなりいろいろな治療をしたが、ダメで僕のもとへ。最初に来た時は、メモ帳持参で、僕が言ったことをばーって書いてました。そんなスポーツ選手、初めて見ました。あんな素直な子はいません。大型だけど気が優しい、ラブラドルレトリバーみたいなやつなんです。

-どんな取り組みを

小倉氏 まずどうなりたいか聞いたら「ケガをなくしたい」って。1年目はケガをしない体づくりから。僕はマシンなどを使って鍛えたりはしない。「ハビットコントロール」という、立ち方とか歩き方とか人間の基本的な動作から変えていこうっていう理論なんです。軸を安定させるトレーニングをした。まともに立てないやつは、まともに歩けない。まともに歩けないやつは、まともに走れない。スポーツなんかできるわけがないって言って。ケガの原因は根本的な体の使い方にある。足をケガする人は、下半身のパワーしか使っていない。上半身の力が弱いから、全部下半身に力がいっちゃう。武蔵も以前は太ももがパンパンで、がに股で歩いていた。だから普段の歩き方から変えた。当時は全力で走るのが怖い時があったらしい。リハビリしても治りきらず、またケガをするから。そもそもケガをする走り方をしていたからなんですけどね。

-成果は

小倉氏 軸を使えるようになったことで、転ばなくなった。昔はヘディングシュートが苦手だったらしい。すぐ崩されるから。それも腰の落とし方とかを変えてみて良くなった。競り負けなくなった。それまで(14年の)3点が最高だった。ケガしない体づくりができて、フル出場が全然なかった選手が、昨季は長崎でほとんどフルで出られるようになったら11点。シーズン前の忘年会で背番号と同じ11点って宣言させて、実現したんです。昨年の忘年会でも最低20点って言わせたら、リーグ戦とルヴァン杯合わせて、ちょうどでしたね。今年は何点って言わせようかな。

-指導の頻度は

小倉氏 今は最低1カ月に1回は。今年は僕が札幌で月に1度講習をしているので、その時にも。LINEで連絡を取り合って、僕が撮った(トレーニングの)動画を送って、これをやっておいてとか言う。歩き方、姿勢とかは、日ごろからやっていないと意味がない。やらなかったら、分かるけど、彼はまじめなので、やっておくように言ったことはやっている。

-今後は

小倉氏 僕は最初に2~3年以内には日本代表になるって言い切ったが、まさか2年を切るとは。3月に選ばれた時に「よくここまではい上がって来たよな」って話をした。彼は素直さと修正力がすごい。まだまだ伸びる。もしいつか海外クラブに挑戦する日が来た時、初めてウエートトレーニングに取り組むのかな。

◆小倉義人(おぐら・よしと)1976年(昭51)7月30日、大阪府出身。スポーツトレーナー養成学校卒業。はり・きゅう整骨院での修行後、「パーソナルトレーナー」として活動。99年からタレントの指導を機にメディア出演が増える。日常の習慣やクセに着目し改善に導く「ハビットコントロール」理論を提唱。これをアスリート向けに応用した「ベース・フィジカルトレーニング」は、身体能力の基礎を高める。都内にトータルビューティーサロン「ボディコントロールファクトリー」を構える。