横浜F・マリノスのMF大津祐樹(29)が9日、都内で大学サッカー部の学生を支援するプロジェクト「Football Assist」のキックオフイベントを開催し、訪れた学生たちと交流した。

同プロジェクトは大津と日本代表DF酒井宏樹(29=マルセイユ)が共同で立ち上げたもの。男女問わず、無料会員登録を行った大学サッカー部の学生へ向け、トレーニングや備品の支援、大学卒業後のキャリアサポートなどを行う。大津と酒井は16年から幼稚園から中学生を対象としたサッカースクールを開催しており、活動を通じてサッカーに励む若者へのサポートの必要性を感じたことが、今回のプロジェクト発足につながったという。

大津は対象者を大学のサッカー部員に限定した理由について「自分は高卒でプロになりましたが、同い年の仲間と話しても大学生の悩みはすごく聞いていました。世代として最も選択肢が狭まっている時だと思うし、酒井もJユース出身なので、僕らはどこの大学の学生にも平等に接することができる。一生懸命サッカーをやってきた人が損する世界になってほしくないし、力になりたいと思った」と語った。大津が自ら営業に出向くなどしてプロジェクトに賛同した企業から資金を募り、学生にはほぼ全てのコンテンツを無料で提供。今後は大津も契約するプロトレーナーによる週3回のトレーニングをはじめ、栄養士による講座や大学サッカー部員を求める企業のセミナーなどの開催を予定している。

「Football Assist スタジアム」と名付けた拠点は、周囲に大学も多い東京・千代田区水道橋駅徒歩3分のビルの一角に設けた。人工芝が敷かれたフロアにはトレーニング器具が並び、プロジェクタースクリーンなども設置。大津も週1回ペースで姿をみせて学生と共にプロトレーナーの指導を受けるほか、フランスでプレーする酒井もインターネットを通じて学生の質問に対してのアドバイスなどを行っていく。東京まで来られない地方の学生にも対応するため、オンラインでの支援も行う予定だ。

引退後ならまだしも、現役のプロ選手がこうした取り組みを行うことは極めて珍しい例と言える。それでも大津は「現役選手として、今こういうトレーニングが必要だということを伝えられるのは大きいと思うし、そこはサッカースクールをやってきたからこそ感じていたこと」と力を込める。11日には所属する横浜での新シーズンの始動も控える中、今オフには明大や早大などのサッカー部の学生のもとを訪れ、直接、悩みなどを聞いて回った。「やらなかったら自分たちも楽かもしれないけど、そこで行動を起こすことで若い世代が育っていく。そういった形でサッカー界に恩返しできれば」と充実感をにじませた。

この日、訪れた学生たちもプロジェクトを歓迎している。一番乗りで会場に足を運んだ中央学院大サッカー部の友利昌徳さん(19)は大津にオフシーズンの練習法などについて質問した。「沖縄県の高校から出てきたので、プロ選手と直接関わる機会など今までなかった。来て良かったし、プロトレーナーさんとのトレーニングもぜひやってみたい」と目を輝かせていた。

江戸川大サッカー部の増山大我さん(21)も「就職活動に不安があって、話してみたいと思った。自ら動くことが大切だと学べました。今後もサポートを受けたい」と笑顔をみせた。

大津は学生との交流を終え「悩みを抱えている人がすごく多いなと思いましたし、まだまだ自分たちが知られてないこともある。やりがいがあるし、すごく変わっていくと思います。だからこそ、多くの学生に来てもらいたい」と話した。

1月10日には同施設で一般向けに大津の握手・サイン会なども行う。今は選手もSNSなどを通じて自分の意見や取り組みを自由に発信できる時代になった。大津は「僕らがサッカー選手として得た経験や学んだことをしっかり発信していくことは確実に必要なこと。賛同してくれる選手もいるし、(SNSなどで)これからいろいろと活動は広がっていくのかなと思います」とプロジェクトのさらなる発展を願っていた。【松尾幸之介】