Jリーグ、サンフレッチェ広島に16年途中まで在籍した日本代表FW浅野拓磨(25=セルビア・パルチザン)。その2学年違いの弟雄也(22)が今季、兄がいた広島入りを果たした。強化担当者として2人の獲得に当たった足立修強化部長(47)が、兄弟の共通点や違いを教えてくれた。

「性格で言えば、鼻っ柱の強さ、ゴールへ向かう爆発的な力は兄貴が上。弟は性格がより明るく、サッカーの技術は断然上でセンスもある。全体的な印象は一緒のようで一緒でない、という感じですね」

浅野家は7人きょうだい。三男拓磨は三重・四日市中央工から広島入り。その後はアーセナルへ移籍し、ドイツなど欧州で活躍を続ける。

四男雄也は、四日市四郷から大体大を経て19年春にJ2水戸ホーリーホック入り。その入団数カ月で広島からオファーを受けた雄也は、同年8月に広島へ完全移籍。一方で水戸のクラブ事情を考慮し、広島から期限付き移籍する形で19年シーズン最後まで水戸に残ってプレーした。

書類上は水戸への期限付き移籍からの広島復帰だが、新入団には変わりはない。プロ2年目は兄と同じ広島から、兄も入団から3年間つけた背番号29でスタートする。

11日に広島市内で開かれた新入団会見。表情や話し方まで兄に似ていた雄也は、いきなり存在感を発揮した。比較的まじめなコメントが並びがちな会見で、雄也は笑いも取りつつ、自己主張もしっかりしていた。

「兄のいたクラブで、自分が応援していた広島に加入できてうれしい。背番号29も受け継ぐことには(兄から)つけるの? と言われただけ。最初は最悪やと思ったが、よく考えたら29だと、兄のユニホームを買った人が自分のファンになってくれれば、買い直さなくてもいい。これはおいしいと思った。兄は日本にいないので、ジャガー(兄の広島で付けられた愛称)を奪っちゃおうかなと思います」

雄也はJ2では昨年34試合4得点と結果を残した。そして今季の年俸は水戸時代のほぼ倍増、推定900万円で契約を結んだ。左利きの攻撃的MFで、広島では左ウイングバックか、1・5列目で得点に直結する仕事を担うことになりそうだ。兄はFWなので、すべてが単純に比較はできないが、雄也は初めて勝負するJ1の舞台へ意気込みを語った。

「昨年はJ2で、J1とは違う部分があるし、どれだけ通用するか楽しみ。攻撃の選手なので得点にこだわりたい。サイドで崩して得点も狙いたい。どちらかと言うと、兄とプレースタイルに似ているとは思う。自分は左利きなので左サイドというよりは、右サイドからシュートを打ちたい」

2人は年齢が近いこともあり、幼少期からけんかや言い合いが多かったという。「拓磨の方が2つ上なのに、オレの方が先にプロになるって、口ぐせのように言ってましたからね。将来は海外に行きたい。アーセナルに行ったら、それも兄と同じになってしまうけど、海外でやりたいですね」。雄也の言葉からは、拓磨は兄=ライバルなのが分かる。その意識を持つ限り、弟の成長は続いていくはずだ。