新潟市出身で日本サッカー協会(JFA)1級審判員の田中玲匡さん(33)が、今季からJ2を主戦場に笛を吹く。将来の「プロフェッショナルレフェリー」を目指す田中さんに20年シーズンに臨む思いや「Jリーグの主審」という仕事について聞いた。

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田中さんは今季Jリーグを担当する主審58人の内の1人。今季は主にJ2を担当するが、2月22日、J1開幕戦の仙台対名古屋では第4審判員を務めた。現在は新潟市内でJリーグ再開に向け準備を進めている。

-今季から活躍の場をJ2リーグに移す

昨季はJ3で主審を努めました。審判アセッサー(評価担当)が毎試合審判員の評価を行い、年間平均点を出し、翌シーズンの担当リーグが決まります。今季はJ2が主戦場となるので、より高いプロ意識を持って臨みます。

-試合を進める上で心掛けていることは

判定する際は、選手に不信感を与えないよう、的確なポジショニングを取ります。事実を見極めることに重点を置いています。

-的確なポジショニングとは

「距離」と「角度」が大切だと思います。状況が生じてから移動、判定では選手を納得させることはできないので、試合の流れを読み、予測を立てながら的確なポジションへ移動します。的確な判定を行うことで、選手は余計なストレスを感じることなくプレーできます。

-試合展開を読む力が審判には必要

重要です。ボール保持者と受け手の動きからヒントを得ています。試合前は担当クラブの試合を動画で確認し、戦術や選手のプレーを予習しています。

-選手との関係は

積極的に両チームの選手とプレーについて意見交換をします。自分の判定基準を伝え、両チームの選手が熱くなりすぎないよう調節することもあります。ただ、選手に審判がコントロールされないよう、線引きはしっかりしています。

-コミュニケーションを取る上で心掛けることは

「表情、言葉のチョイス」には気をつけています。また「姿勢」も大切です。弱々しい主審では説得力がないですからね。日々の生活でも意識しています。

-試合へ向けた体調管理は

主審は1試合で12キロ以上走るので、日々のトレーニングは欠かしません。主審にはただ長距離を走るのではなく、短距離のダッシュや急なストップなど、多様な動きに対応する力が必要です。自重トレーニングで体幹を鍛えることや、アジリティ(機敏さ、敏しょう性)の強化をメインにしています。

-審判員を目指したきっかけは

3級審判員の資格を持ち、休日に子供らの試合で笛を吹いていた父親の影響があります。サッカーに携わる仕事がしたかったので大学2年の頃に審判員のプロを目指すことにしました。

-これまでで1番印象に残っているのは

18年7月、新潟の本間勲さん(38)の引退試合で、弟の亜土夢(32=HJKヘルシンキ)と一緒にピッチに立てたことです。1つの夢がかなってうれしかったです。

-さらなる高みを目指す

J1で200試合以上、主審をすることを目標に、まずはJ2での試合に全力で取り組みます。最終的には、1級審判員の中でも限られた人しかなることができない「プロフェッショナルレフェリー」を目指します。主審としての活躍が、新潟への恩返しだと思っています。【聞き手・小林忠】

◆田中玲匡(たなか・れお)1986年(昭61)4月12日生まれ。新潟市出身。木戸中-高志(現高志中教)-上武大。大学在学中に3級審判員、卒業後に2級審判員の資格を取得。12年、JFAレフェリーカレッジ(現地域レフェリーアカデミー)に入学。13年11月、1級審判員登録。J3で主審48試合、副審17試合を担当。弟は元新潟の田中亜土夢(フィンランド・HJKヘルシンキ)

◆Jリーグ担当審判員 JFAには公認審判員制度が設けられており、4級から1級まで順番に資格を取得することになっている。Jリーグ公式戦を担当できるのは1級審判員のみ。1級審判員は現在214人で、Jリーグ担当審判員は157人(主審58人、副審99人)。その中でも優秀な審判と認められると、プロフェッショナルレフェリーとして、プロ契約することとなる。