名場面に名言あり。サッカー界で語り継がれる記憶に残る言葉の数々。「あの監督の、あの選手の、あの場面」をセレクトし、振り返ります。

「大迫、半端ないって」。08年度の第87回全国高校サッカー選手権準々決勝、鹿児島城西-滝川二戦。鹿児島城西のエースFW大迫勇也(当時3年)に2得点を許すなどし、2-6で敗れた滝川二のDF中西隆裕主将が試合後のロッカールームで泣きながら叫んだ言葉だ。その姿がTVカメラに撮られ、全国放送の大会ハイライト番組で流れたことで一気に拡散。以降は大迫のすごさを形容する言葉として定着した。

大迫は同大会で大会新となる10得点の大活躍。10アシストも挙げるなど攻撃の中心として躍動し、チームも準優勝した。ちなみに中西主将は「半端ないって」と叫ぶ前に「懐が深く、2人がかりで止めにいっても手ではじかれた。エグい」とポストプレーにも感服しており、「後ろ向きのボール、めっちゃトラップするもん。そんなんできひんやん普通」などと話す一連の様子もYouTubeなどで多く再生された。中西主将の姿と「大迫、半端ないって」の言葉が描かれたフラッグなどもつくられ、今や日本代表戦のスタンドで見かけない日はない。

08年から10年後の18年W杯ロシア大会では、1次リーグ初戦のコロンビア戦で大迫が決勝点を決めると再びこの言葉が注目され、同年の「新語・流行語大賞」のトップテン入り。各所で反響を呼んだ。

監督としてあのロッカールームにいた栫(かこい)裕保・滝川二前監督は名言誕生の背景について「彼(中西)は明るくて真面目な主将らしい主将。カメラも入っていたので、落ち込むみんなを明るくしようと思ったのでは」と推測する。相手をたたえ、チームメートを励ますつもりで放った一言。大迫本人の活躍もさることながら、あれから約12年たっても、その言葉は日本サッカー界にどっしりと君臨している。