藤枝明誠が4年ぶり3度目の栄冠を手にした。東海大静岡翔洋に3-0で完勝。後半にMF賀茂大紀(3年)がFKを頭で合わせて先制すると、MF中山碧(あお)主将(3年)が右足ミドルで追加点。さらにセットプレーの流れでFW村松寛太(3年)がダメ押しの3点目を奪った。 コロナ禍で揺れたチームは攻撃的スタイルを進化させて、頂点に立った。全国高校サッカー選手権(12月31日開幕)の組み合わせ抽選会は、16日に行われる。

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就任6年目の松本監督が男泣きした。試合終了直後は選手をみつめ、目頭を押さえた。優勝インタビューでは「感動した」。選手をたたえた声は震えていた。

「コロナもあって、1番苦労した」。個性豊かな選手がそろっているが、チームとしてのまとまりがなかった。練習試合では県Bリーグ所属の焼津中央に負けたこともあった。指揮官は「まとまれば力を発揮するのに、それができない」。決勝4日前には覇気がないことを理由に練習を打ち切り。厳しく指導してきた。

それでも、真摯(しんし)に向き合ってきた。「選手は自分の息子だと思っている」。指導の信念はサッカーを通じた「教育」。それも、一緒に成長していく「共育」だという。コロナ禍で思うように練習ができなかった選手の悩み相談にも乗った。この日のハーフタイムには「お前らを信じている」と送り出した。

手厳しい指揮官も、ピッチを離れれば2児の父親。ベンチに持ち込むバッグには、小2長女からの激励の手紙が入っている。家族の支えも力に変えてつかんだ4年ぶりの全国切符。大会を通じて成長した自慢の「息子」たちとともに、全国制覇を目指す。