激動のシーズンは劇的な幕切れとなった。第99回大会の決勝で、山梨学院が青森山田に、2-2で突入したPK戦を4-2で制し、頂点に立った。11大会ぶり2度目の優勝。決勝がPKで決着するのは8大会ぶりだった。

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山梨学院のGK熊倉匠(3年)の前には、かつての仲間がいた。延長でも2-2で決着は付かず、今大会3度目のPK戦。ともに1人目を決め、迎えた2人目は安斎。J1FC東京の下部組織、U-15深川でチームメートだった。互いにユース昇格を果たせず、苦汁をなめた間柄。シュートは熊倉から見て左へ。跳んだ先も同じだった。「あいつと決勝でできてうれしかった。あいつだけには負けたくなかった」。意地と意地のぶつかり合いをセーブした。

「PKになって、今日は自分の日だなと感じていた」

いつも通りのルーティンを消化していたからこそ、焦ることもなかった。試合前は、J1ヴィッセル神戸のGKの練習動画を研究。準決勝の帝京長岡戦の試合前は柏レイソル、準々決勝の昌平戦の前には、セレッソ大阪のGKの練習動画を研究していた。「スーパーセーブ集はもちろんすごい。そうではなく、そのためには普段からどういう練習をしているか気になって」。基礎を見返し、冷静に処理した。

小学校時代はFWやDFでありながら、PKでは臨時でゴールマウスに立っていた筋金入りの「PK職人」。名実ともに日本一のGKに。「いろんな人に支えてもらって、日本一になるために頑張ってきた。報われました」。選手権最少得点となる6戦8得点の優勝。熊倉が、ゴールに立っていたからこその頂だった。【栗田尚樹】