「新リョウマ伝」が幕を開ける。大卒2年目のベガルタ仙台MF気田亮真(23=J2V・ファーレン長崎)は唯一無二の突破力を誇り、キレキレのドリブルで相手を翻弄(ほんろう)。昨季ともに戦った手倉森監督の下で再び異彩を放つ。「去年はJ2、今年はJ1という日本のトップリーグで、爪痕というか爆発的な、サッカー界に衝撃を与えるようなところをテーマにやっています」。大河ドラマの主役ばりの活躍をピッチで披露し、スポットライトを浴びる。

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華麗に包囲網を破壊する。気田の代名詞は個人技、コンビネーションを駆使しながらの崩しで「相手の守備を壊していくのが武器だと思います」。1対1の対決でも自信を示し、選手としての哲学は「とにかくびびらずに仕掛け、ボールを持ったらバックパスせず、どんどん前に行くのを意識している」。ミスが出ても「もう1回挑みに行く姿勢は大事にしています」。ちょっとやそっとではへこたれない。

中学3年ごろからブラジル代表のパリ・サンジェルマンFWネイマールのプレー動画を見るようになり「これが理想だ」と現在も追う。「ボールを持ったときは自分の感覚を信じている」が、ボールがない状況でのポジショニングや駆け引き、周りを見るタイミングを参考にしている。

気田は偉人に通ずる。幕末の志士、坂本龍馬は長崎で海援隊(商社)を結成し、スコットランド出身の貿易商人グラバーと交流していた。同じ「リョウマ」、昨季プレーした長崎にも縁がある。さらに外国人選手と積極的に英語で会話し「いろいろ(外国人の)感覚を知りたいし、英語を身につけたい」。キャンプ期間は練習場から宿舎に戻るバスで「さっき何て言えば良かったのか調べています」と1人反省会。将来的には海外でのプレーを夢見ており、語学習得にも貪欲だ。

大学2年ごろから1年ごとのテーマ設定を欠かさない。20年は「魅了する」で21年は「衝撃を与える」。今季の言葉に込めた思いは「J1は活躍すればいくらでも可能性が広がる世界。自分の存在を日本中に知らしめたいというか、人の心に衝撃を与えるようなプレーをしたい」。生粋のドリブラーが伝説への1歩を踏み出す。【山田愛斗】

◆気田亮真(きだ・りょうま)1997年(平9)8月12日生まれ、千葉県柏市出身。千葉U-18、専大、長崎を経て完全移籍。J2通算32試合4得点。少年時代に好きだった選手は元ブラジル代表FWロナウジーニョや長崎FW玉田圭司。専大では文学部英語英米文学科で学び、同大3年時から背番号10を背負う。172センチ、62キロ。背番号32。