FC東京が長いトンネルから抜けた。15日の第14節柏戦に、敵地で4-0の圧勝。リーグ戦での連敗を5で止めた。

試合後、長谷川健太監督の口から幾度となく同じ言葉が出てきた。「もがいた」。約1カ月、勝ち点から遠ざかった。とくに前節の鹿島戦、前々節の横浜戦と続けて0-3で大敗。危機的状況を打破する1勝に「久々の勝利は格別だと感じる。Jリーグで1勝することは大変だと感じた」。指揮官の言葉には1勝の重さがにじみ出た。

目が覚めるような快勝。長谷川監督は「いっぺんに変わったわけではない」と話した。試行錯誤を続けてきた。陣形を変え、選手のポジション配置を変え、起用法も変えた。けが人が続出する中、さまざまな手を打ってきた。選手だけのミーティングも行った。試合前、長谷川監督は「もがいた1カ月は無駄にならない」と選手たちを送り出した。

この日は持ち味のハイプレスが戻った。横浜戦と鹿島戦で、球際といった基本の部分で戦えなければ勝負にならないことを突きつけられた。3-0としたハーフタイムにも「悔しい1カ月を絶対に忘れるな、ここで受けたらなにも残らない。残り45分にもすべてぶつけろ」とげきを飛ばした。指揮官の熱がチームに伝わり、戦い方を変えてきた相手に対しても持ち味の堅守で立ちはだかった。

つなぎ役として攻撃を組み立てたMF高萩洋次郎の存在感が際立った。束になって猛然と寄せるプレス。味方がボールを奪った瞬間に相手ゴールへなだれ込む前線。痛みをものともしない守備陣。どれかひとつでも欠けていれば、この快勝につながったかはわからない。ピッチに立った全員が、らしさを思い出したことこそ、この日の最大の収穫だ。長谷川監督は「ここからまた1歩ずつ前に進みたい。一喜一憂せず、次に向けて準備したい」と、強いまなざしを前に向けた。