川崎フロンターレの鬼木達監督(47)が、史上最速の就任5季目、156試合でJ1通算100勝を達成した。

鹿島アントラーズに2-1で勝利し、開幕から20戦負けなしのJ1新記録も打ち立てた。1-1の後半ロスタイム4分、1分前に投入されたFW小林悠(33)が値千金の決勝点を決めた。今年も等々力劇場は健在だ。

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勝利を引き寄せたのは、川崎F一筋12年目のFW小林だった。ピッチに立ったのは後半ロスタイム3分。その1分後、MF長谷川の左クロスをFW知念と相手DFの競ったボールが、ファーサイドの小林にこぼれた。「オニさん(鬼木監督)から『竜也(長谷川)にクロスを上げさせるから、知念の後ろに入れ』と言われていた。オニさんの狙い通り」。胸トラップでおさめて、左足で冷静にゴールを決めた。「オニさんの100勝は自分のゴールで決めたかった」と、強い思いがシュートに宿った。

小林が入団した10年に、鬼木監督もコーチに就任した。無冠の時代から、ともにチームを作ってきた。小林は「この年まで向上心をもってやれているのは、オニさんのおかげ。若手からベテランまでしっかりと話して、選手をやる気にさせてくれる。全てにおいて感謝しかない」と感謝する。

その鬼木監督は、古巣戦でメモリアル勝利を収めた。93年に市船橋から入団した鹿島は、自身の“原点”だという。「そんなに試合には絡めなかったけど、なぜ強いのか、チームの雰囲気や選手、クラブの姿勢を見て学んだ。鹿島に入れたことで、サッカー人生も長くなったと思う」。鹿島で過ごした時間が、勝利にこだわる鬼木監督スタイルの土台となっている。

鹿島を率いた相馬監督も、選手としても指導者としても共に戦った間柄。縁ある人たちの前で節目の勝利をおさめ、鬼木監督は「こういう姿を見せられたのは、鹿島の人たちに対してもうれしく思う。しびれるようなゲームで(100勝を)達成できてうれしい」と喜んだ。【杉山理紗】