鹿島アントラーズは川崎フロンターレに1-2で敗れた。鹿島は公式戦で、18年9月のルヴァン杯を最後に川崎Fから勝利を奪えていない。幾度と苦い思いをしてきたが、今回の対戦は、後半に限れば互角の戦いができたのではないかと思う。前半は、前線から果敢にプレスをかけたが、川崎Fの高い技術を駆使したパス回しにいなされた。後半は、相馬直樹監督が掲げる「チャレンジャー精神」でゴール前に迫力ある攻撃を仕掛け、MF荒木遼太郎、土居聖真、FW上田綺世が絡んだ攻撃が、川崎Fの守備ブロックを脅かした。相馬監督は試合後、「後半やったことを前半からやらなくてはいけなかった。チャレンジャーとしてもっと怖がらずにやらなくてはいけなかった」と振り返った。

川崎Fは初タイトルを獲得した17年、元日の天皇杯決勝で鹿島アントラーズに2-1で敗れている。記者は当時、川崎Fを担当していた。16年11月にはJリーグ・チャンピオンシップのセミファイナルで鹿島に敗れ、タイトルを阻まれた。17年シーズンを前に、FW小林悠、DF谷口彰悟が「練習から厳しさを求める差が鹿島との差につながっている」と振り返っていたのを思い出す。鬼木達監督が就任後「うまいだけじゃ勝てない」と激しい球際と闘う姿勢を植え付け、練習から試合以上の激しい守備が日常になっていった。

もちろん、川崎Fの技術の核である「止める・蹴る」の向上も突き詰めていった。各選手が「どこにボールを止めて置くか」など、1本ずつの質にこだわり、トラップ、パス、ターンなど中身の濃い練習に取り組んでいたのが印象的だった。18年に2年連続でリーグ制覇を果たした際、中村憲剛氏はこう話した。「自分たちがやるべきことをやれば、違う次元にいけるサッカーになると思っている。それを目指せる環境に今、フロンターレがあって、連覇できたのは、グラウンドはうそをつかないということ」。それから3年。中村氏の言葉通り、開幕から20試合無敗と次元の違うサッカーでリーグを独走している。

「技術あっての戦術」と言われるが、パスのスピードや質、トラップ、ポジショニングを含め、総合的に川崎Fが上だったように思う。鹿島のDF常本佳吾は大卒1年目ながら1対1の強さを発揮し続けたが、最後の最後で川崎FのMF長谷川竜也にクロスを許し、決勝点を奪われた。常本は試合後「自分たちも、勝ち点を積み重ねていく中で自信を持ってやったつもりだが、川崎の圧は、他のチームとは違ったのは個人的に感じている」と悔しさを口にした。

川崎Fは鹿島とのタイトルが懸かった試合での敗戦を糧に、王者へと駆け上がっていった。鹿島は19歳の荒木をはじめ、東京五輪世代のDF町田、FW上田、GK沖と若い選手が多い。鹿島伝統の「球際の強さ」「前への姿勢」も相馬監督が就任後、浸透しているように感じる。各選手が、川崎Fとの対戦で感じた悔しさと課題を実践に移していけば、再び栄冠を手にする日が来るはずだ。【岩田千代巳】

※鹿島相馬監督の写真に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。