元日本代表MF乾貴士(33)が、古巣セレッソ大阪の熱意を受けて、10年ぶりのJリーグ復帰を果たすことになった。

乾は今季からスペイン2部に降格したエイバルを6月で退団し、ここまで無所属だった。今夏は日本に帰国し、スペイン1部からのオファーを待ちながら関西で自主練習を重ねた。だが、最終的に納得のいくオファーは届かなかったという。

その乾に対して、C大阪は昨年から節目ごとに復帰要請を行い、今回も推定1億円の年俸で熱意と本気度を示すオファーを提示。33歳になった今も十分に戦力になるという評価だった。森島寛晃社長(49)は「本人の気持ちを優先させ、静かに見守りたい」とコメントしていた。

クラブ経営で債務超過に陥るC大阪では、乾獲得は決して簡単にできる補強ではなかった。ただMF香川真司(PAOK)と並ぶクラブレジェンドであり、メインスポンサーのヤンマーでスポーツや文化活動を通じて社会貢献を担う企業アンバサダーも務めており、たんなる1選手の枠を超えた存在だった。

乾もスペインでのプレー優先を示す一方、かなわなければJリーグ復帰を模索していた。今夏、大阪市内の本拠地ヨドコウで開催されたC大阪の公式戦を数試合観戦し、練習場やクラブ事務所も訪問。現実味を増していた古巣復帰へ、心身とも準備を進めた。

C大阪は現在、乾のかつての恩師でもあるレビークルピ前監督が26日に事実上の解任となったように、今後は残留争いに巻き込まれる可能性もある。28日のガンバ大阪戦では、コーチから昇格した小菊昭雄新監督(46)が初陣を飾り、最悪の流れは断ち切ったが、まだ油断はできない。

その大阪ダービーでは、MF清武が負傷交代するなど戦力面の不安も生まれた。結果的にも日本で練習を続け、コロナ禍での隔離問題もクリアされている乾の加入は、最高のタイミングになる。日本代表経験のある右サイドのMF坂元、左サイドの乾、そこに清武が絡めば、攻撃力アップが期待できる。

1得点も記録した11年7月31日の鹿島アントラーズ戦(長居)以来、乾がJリーグの舞台に帰ってくる。