リーグ2位いわてグルージャ盛岡は敵地でアスルクラロ沼津と対戦。後半、牟田雄祐(31)のゴールで先制したが追いつかれ、1-1のドロー。3位熊本がFC岐阜に2-0で勝ったため、熊本がJ3優勝。岩手は優勝は逃したものの、勝ち点53で並ぶ宮崎を得失点差で上回り、J2昇格圏内の2位をキープ。秋田豊監督(51)就任2年目でクラブ初のJ2昇格をつかみ取った。来季のJ2は、昇格の岩手、J1から降格した仙台に加え、山形、秋田の東北勢4チームが在籍。J1昇格を目指してしのぎを削っていく。

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中尊寺金色堂をはじめ黄金が代名詞で、県のキャッチコピーにもなっている岩手。その“黄金の国”からJ2へ名乗りを上げた。岩手が19年のJ3最下位からわずか2年でJ2昇格を果たした。

0-0の後半15分、中村太亮(32)のフリーキックを相手GKがファンブル。そのこぼれ球を牟田が右足で押しこみ先制。牟田は一目散にサポーター席に向かってダッシュしガッツポーズ。同20分に追いつかれたが沼津の猛攻に耐え続け、歓喜の瞬間を迎えた。昇格を決める貴重な1点を挙げた牟田は「1つ1つを乗り越えてきた結果が昇格だと思う。本当にホッとしています」と悲願の昇格を喜んだ。

チームは、リーグ後半戦から勢いづいた。8月28日に八戸を3-2で下してから14試合を戦い、通算9勝4分1敗。9月26日の今治戦からは10戦負けなしと、J2昇格まで一気に駆け抜けた。秋田監督は「ここ10試合は我慢するところで我慢しながら、前に踏み込んでパンチを繰り出すことができるようになってきた。『勝つしかない、勝ち点を取っていくしかない』という状況になったからこそ、この10試合の状況が作れたんじゃないかと思います」と後半戦の好調を分析。就任2年目の指揮官は選手たちをたたえるとともに「うれしいというよりもホッとしています」と胸をなで下ろした。

勝ち点を取るしかない最終節。執念でつかんだ勝ち点「1」には多くのサポーターの支えもあった。ホーム最終戦には2453人、アウェーにもかかわらず100人を超えるサポーターが岩手から駆けつけた。選手とサポーターの“一岩”が昇格を呼び込んだ。

クラブの正式名称、いわてグルージャ盛岡の「グルージャ」はスペイン語で「鶴」を意味する。震災から10年。節目の年につかんだJ2昇「鶴」。次はJ2の舞台で大きく翼を広げる。【濱本神威】